原田ひ香『三千円の使いかた 』年代別のお金の節約ストーリー。
「3000円で人生が決まる」と、祖母に言われた主人公の御厨美帆は、先輩のリストラがきっかけとなり、人生に不安を感じ、お金の使い方を考え直します。
この本は「お金」がメインとなっていますが、ただの節約話ではありません。
「たったの3000円」と取るのか、または「3000円の大金」として捉えるのかによって、人生は違ってくるのです。
原田ひ香著『三千円の使いかた 』
人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。
え? 三千円? 何言っているの?
中学生だった御厨美帆は、読んでいた本から顔を上げた。
「人生が決まるってどういう意味?」
「言葉どおりの意味だよ。三千円くらいの少額のお金で買うもの、選ぶもの、三千円ですることが結局、人生を形作っていく、ということ」
原田ひ香の小説『三千円の使いかた 』は、こんな冒頭の一文から始まります。
三千円の使いかた (中公文庫 は74-1) [ 原田 ひ香 ]
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第1話「三千円の使いかた」
主人公・御厨美帆(24歳)、5歳年上に姉・真帆(29歳)、実家の母(55歳)、祖母(73歳)の、4人のポットの買い方から始まります。
それは、社会人2年目の主人公・美帆がガラスのシンプルなポットを3,000円で買います。
ハーブティーにも使えて、インテリアにもよく合うものです。
みんなは、どうしてたかと思い出すと、結婚して子供のいる姉はの真帆は、
コーヒー用の琺瑯(ほうろう)のポットで、お湯を沸かせて、小さめのやかんとしても使えるもので3,980円でした。
十条駅から徒歩10分に住む、母・智子(55歳)は、北欧のブランドのティーポット。
祖母・琴子は、青と白の磁器のロイヤルコペンハーゲンを、長年使い込んでいますが、
日割に計算すれば、1年間で3,000円を切るだろうと、思ったのです。
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職場の先輩がクビになった。
御厨美帆は、大学を無事卒業して、西新宿の中堅IT関係会社に就職し、1年程で、祐天寺に部屋を借り、一人暮らしを始めました。
ここなら中目黒にも近い、理想の場所で、管理費含む家賃は98,000円でした。
やりたいことを実現してきたつもりだった。大学でも、就職でも。それは先輩の小田街絵さんがクビになるまでは。
会社で美帆の教育係だった44歳の独身先輩・街絵さんがリストラされたことで、美帆の自信と安心は揺らぎます。
自分は、安定した場所にいるわけではなかった。
今のように若いうちはいいとしても、ちょっと歳を取ってしまえば、ポイと放り出されてしまうかもしれないと。
ほんの少し前まで人生に満足していた美帆は、これから先、どのように生きていけばいいのだろうと、大きな不安を抱えます。
住まいの近くの中目黒駅前で、保護犬・保護猫のボランティアを見かけます。
そこで保護犬に触れた彼女は、ペットが飼えるマンションや一軒家を買うと言う、新たな目標を思いつくのです。
今の不安を解消するには、小さな安心を少しずつ積み重ねていくしかありません。
しかし、現在の彼女の貯金は約30万円。
そのマンション、終の住処でいいですか? (新潮文庫) [ 原田 ひ香 ]
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家族4人の女たちが登場。
姉の美帆は一念発起して貯金や節約を始めまるのですが、彼女には譲れないものもあるのです。
『三千円の使いかた 』は、24歳の会社員・美帆が貯金に目覚め、
結婚前は証券会社に勤務していいて、プチ稼ぎに夢中の29歳の姉・真帆、
親友が熟年離婚をすると言いだした、体調不良に悩む55歳の母・智子、
そして、老後の資金が足りなくなることを恐れて、パートを始める73歳の祖母・琴子と、
世代を超えた、様々な世代の女性たちが登場します。
彼女らは、各々の人生の岐路に立ち、それぞれの危機に直面しています。
御厨美帆を取り巻く女性たちは、自らのお金と人生をどう捉えて、どのように向き合っていくのか。
人生にとって切っても切れない「お金のこと」を、楽しみながら考えられる内容です。
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第2話「七十歳のハローワーク」
祖母の琴子は、年金で細々と暮らしています。実は貯金は1千万あるのですが、それには手をつけたくないと思っていて、
仕事をしてみようと思い立ち、面接に行ったりして、最後は老舗の和菓子屋で働くことになります。
仕事をして収入を得るだけでなく、誰かの役にたったり、社会との関わり合いを、改めて感じさせて呉れます。
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第3話「目指せ、貯金一千万」
一人娘も出来て、幸せに3人暮らしているものの、夫の稼ぎは少なく、生活を切り詰めて1000万円を貯めようと頑張っています。
そんな時、昔からの女友達と会っておしゃべりしたら、心がザワつきます。
友達が近く結婚するのですが、玉の輿らしく、ダイヤの豪華な指輪に、住むのはタワマンらしいのです。
結果的に、この友人は婚約破棄するのですが、相手の親の生命保険の掛け方に疑問を持つのでした。
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第4話「費用対効果」
第4話の主人公は、祖母の琴子と親しくしているフリーター・小森安生ですが、彼はやたらと「費用対効果」を気にします。
ものすごくいい人なんだけど、お金にも異性関係にも、ややルーズな人です。
ずっとお気楽に暮らしていた小森安生ですが、
長年の恋人が、子供を産みたいと言い出し、逃げるように遠い場所のバイトに出かけてしまい、
そこで、れなという娘に誘われて…
彼は「費用対効果」を一番に考えて、
車や家はもちろん、家族や子どもを持つのも、無駄なんじゃないかと斬り捨てていく、タイプなのです。
安生の恋人はフリーランスで働いているので、保険は個人で加入するしかなく、ボーナスも退職金もない中で、
どうやって、経済的に安定させていくことが出来るのかと、悩んでいます。
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第5話「熟年離婚の経済学」
母の智子がガンの手術をして退院して来ます。しかし、父は相変わらず何もしません。
虚しくて溜息ばかり出る始末です。貯蓄も少なくて、先の事を考えると不安だらけなのです。
病院の付き添いで来て呉れている、長年の元客室乗務員の親友が離婚することになります。
夫婦の関係はどうなるのか?
その後、母・智子と父が散歩を初める事などが語られ、夫婦関係は、少しは良い方向に行ってるのか心配です。
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第6話「節約家の人々」
なんと彼氏の親が勝手に奨学金を借りており、それの返却が550万(利子を入れると700万)あると言うのです。
そして、彼の実家にお邪魔したら、心配に思ってしまう様なご両親だったのです。
そもそも、息子に黙って奨学金を借りて、その支払い義務を、息子に転換すると言う親なのです。
息子が彼女を初めて家に連れて来たと言うのに、ちゃんとした挨拶もせずに、ゴロゴロしている父親と兄弟に呆れるのでした。
彼氏の借金の返済はどうなるのか…
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年代別でお金の不安が違う。
この本は、御厨家の人々が直面する、将来への不安や人生のピンチを、
70代、50代、30代、20代の、御厨家の3代にわたる、女性たちの節約ストーリーです。
お金を貯める一番の方法は、お金に興味を持つことでしょう。3,000円の使い方で、その素養を知ることだって出来るのです。
それが、第1話に出て来るポットの買い方です。おしゃれな品を買うのか、機能性を重視して買うのか、
購入時はチョット高額でも、長く大事に使うことで、時間を考えたコスト意識を持つのか、そんな気づきを教えて呉れるのです。
お金に興味を持ち、貯金を始めることで、お金が貯まって行く喜びと、
もっと殖やすには、どいうしたら良いのかと言う、発想力を学ぶことが出来るのです。
更に、年代ごとで、お金の使い道が違っていて、その年代での心配事も様々です。
早く、お金のことを知って、将来に備える事が出来れば、夢に近づくのは間違いありません。
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