イチロー先生の「嫌われるの大好き」とアドラーの『嫌われる勇気』の共通性。
今、世間では「嫌われる」と言う言葉のキーワードで、2つの話題性が上がっています。
1つはメジャーリーガーだったイチローさんの「他人から嫌われるの大好き」と言う発言の言葉と、
もう1つは、アドラー心理学を噛み砕いた本として有名になった『嫌われる勇気』ではないでしょうか。
SMBC日興証券おしえて!イチロー先生
イチローさんは、日米のプロ野球で大活躍し、現役時代にはあまり見せなかった本音を語る動画が今、ネット上で人気になっています。
友人、夫婦観などについて、一般の人たちから寄せられた、様々な質問に答える姿からは、
超一流のアスリートの意外な側面を見せています。
動画はイチローさんをブランドパートナーとして起用する、
SMBC日興証券が公開した「おしえて!イチロー先生」の中で、イチロー先生が質問に答えているのです。
昨年秋に同社が公開し、1千万回を超えて視聴された、
「人生100年イチロー人生すごろく」に続く第2弾として、計27本が2020年6月23日から公開されています。
人から嫌われないためにの質問に答える。
その中で、人から嫌われないためにはどうすれば良いのかの質問に対して、
「他人から嫌われるの大好き」と、言い切った言葉が話題を集めているのです。
人気商売のプロ野球選手として、多くの観客を集め、
それにより多額の収入を得て来たイチローさんにとって、お客さまは大切な存在である筈です。
しかし、好かれるために迎合するのではなく、プロ野球選手として結果で評価して欲しい、
その結果を出すためには、ストイックな生活や行動をして、結果を出して来た、イチローさんらしい言葉ではないでしょうか。
有名人の好かれる人ランキングなどで。上位の人は、嫌われる人ランキングでも上位になるようです。
昔、アンチ巨人と言う言葉がありました。
V8を達成した頃の読売巨人軍は無敵で、向かうところ敵なしでしたが、その反面でアンチ巨人になる人も出て来ましたが、
アンチ巨人の方は、根底では、巨人びいきだったのかもしれません。
結果がすべての一流選手の世界。
前人未到の活躍をしたイチローさんは、多くの熱狂的ファンも多くいた反面、
野球で結果が出せなかった時には、多くの方から厳しいヤジや、お叱りを受けてきた筈です。
そんな事をたくさん経験して来たイチローさんだからこそ、
そんなヤジやお叱りを、力に変えて頑張る手段にしていたのでしょう。
だから、その言葉を聞いた時、人は感動するのではないでしょうか。
『嫌われる勇気』アドラーの心理学。
もう1つは、『嫌われる勇気』と言う本についてです。
『嫌われる勇気』と言う題名の、「嫌われる勇気」何だか気になりませんか。
この本は、日本におけるアルフレッド・アドラー心理学の第一人者(日本アドラー心理学会顧問)で、
アドラーの著作も多数翻訳している岸見一郎さんと、
臨場感あふれるインタビュー原稿を得意とするライターの古賀史健さんの共著です。
第三の巨頭 アルフレッド・アドラー。
心理界の三大巨匠、フロント・ユング・アドラー。
2013年に刊行されたこの本は、100万部を超えるベストセラーになっています。
世界的にはフロイト、ユングと並ぶ、心理学界の三大巨匠とされながら、
日本国内ではほとんど、無名に近い存在のアルフレッド・アドラーに光をあてています。
そんなアドラーを、知られざる「第三の巨頭」と呼び、もうひとつの哲学とし注目しています。
そんな彼は、オーストリア出身の精神科医なのです。
「嫌われる勇気」を始めて聞いたのは。
私はこの『嫌われる勇気』の題名に惹かれました。
「嫌われる勇気」この言葉を聞いたのは、私が30代の頃で、この本が刊行されるよりも、ずっと以前でした。
それは、私の上司がよく話していたからなんです。
その上司は私たちが、何日も掛けて仕上げた稟議書を、5分ほど見て決裁すると、
決裁箱に入れ、また、読み掛けの新聞に目を通すのでした。
そして、終業時間が近づくと、私のところにやって来て、早く仕事を切り上げろ、これから飲みに行くぞと、言うのでした。
あまりに度々声が掛かるので、他の人を誘って行ってください。
今日は仕事があるのでと言ったところで、翌日には、また声を掛けてくるような人だったのです。
飲み屋でよく言われた「嫌われる勇気」
その上司が、飲むと必ず言っていたのが、
「人から良い人間だと見られるのは大変なこと、俺の事を好きな人が半分、嫌いな人が半分いると思って仕事をしている。」
「60%の人が好きだと思って呉れれば、残りの40%の人に嫌われたっていいんじゃないのかな、
あまりにも、良い人でいるのは大変なことだ、嫌われる勇気も必要だぞ。」と、言っていたのです。
その時「嫌われる勇気」も、人生では必要なことだと意識し出したのです。
上司になった時、部下に注意が出来ないようでは、仕事になりません。
いつも良い人でいるのは難しい事です。
確か染谷和巳さんの著書で『上司が「鬼」にならねば部下は動かず』と言う本がありました。
優しい言葉や態度では、人は動いて呉れない事が多々あるのです。その時は嫌われる勇気が必要なんでしょう。
『嫌われる勇気』
この『嫌われる勇気』の本では、アルフレッド・アドラーの理論を、平易かつドラマチックに伝えるため、
哲学者(哲人)と青年との、対話篇形式の会話によって、その思想を解き明かしています。
「トラウマ」の存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、
対人関係を改善していくための、具体的な方策を提示していくアドラー心理学を、分かりやすく表現しています。
哲人と青年との会話問答は、古代ギリシャのソクラテスやプラトン、アリストテレスが現代の日本に於いて、
当時と同じように、「人間の幸福とは何か」「どうすれば人は幸せに生きることができるか」を、問答しているようにさえ見えてしまいます。
物語は、こんな文章から始まります。
名言:世界はどこまでもシンプル。
「かって、1000年の都と謳われた古都のはずれに、世界はどこまでもシンプルであり、人は今日からでも幸せになれる、と説く哲学者が住んでいた。
納得のいかない青年は、哲学者のもとを訪ね、その真意を問いただそうとしていた。悩み多き彼の目には、世界は矛盾に満ちた混沌としか映らず、ましてや幸福などありえなかった。」
青年が哲人に質問します。「世界はどこまでもシンプルである、というのが先生のご持論なんですね?」
それに対して哲人は「世界は信じがたいほどにシンプルで、人生もまた同じ」と答えます。
すると青年は、その持論を撤回して欲しい、この地に一風変わった哲学者が住んでいて、看過しがたい理想論を唱えている。
そして、その哲学者曰く、人は幸せになれる、世界はシンプルである、誰もが幸福になれると言っていると語ったのです。
これに対して哲人は、自分自身が変われば、世界はシンプルな姿をとり戻す、問題は世界がどうであるかではなく、あなたがどうであるか、
世界を直視するその勇気があるのかと言う、勇気の問題だと言うのです。
更に哲人は、人は変われます。のみならず幸福になることもできます。例外なくと語るのでした。
青年は劣等感の持ち主だった。
過剰なまでに他者の視線を気にする人。
そして、青年は哲人の書斎に招き入れられるのでした。
青年は幼い頃から自分に自信が持てず、出自や学歴、容姿に強い劣等感があり、過剰なほどに他者の視線を気にし、
他者の幸福について心から祝福できなかったのです。それが、自己嫌悪となっていたのです。
「トラウマ」の存在を否定。
本文では、過去の出来事がトラウマになって、外出することが出来なくなった人の話が出て来ます。
それに対して哲人は、外出が出来なくなったのは、過去の「原因」ではなく、いまの「目的」を考える事だと言います。
それは、”外に出たくないから、不安と言う感情を作り出している”、われわれは原因論の住人であり続ける限り、一歩も前に進めないと言うのです。
そして、「トラウマ」の存在を否定したうえで、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言し、
対人関係を改善していくための具体的な方策を提示しているのです。
人生には色々な苦しみがやって来ます。そのすべての悩みの原因は、対人関係だとマドラーは言い切るのです。
他の人から認めて貰いたいと言う、承認欲求を充たすために、嫌われないように立ち回る生き方は、
不自由極まりない、その開放のために、嫌われる勇気を持ちなさいと。
変われないのは、今のままが楽だから。
人の性格・気質は10歳頃に決まる。
そして、性格や気質を「ライフスタイル」と呼び、10歳頃に自分が選んだものとして定着すると言います。
しかし、これはもう一度選び直すことも可能だとしています。
今のままのほうが楽で、変わるのは不安なのです。
人間の悩みのすべては、対人関係の悩みなのです。
宇宙に人がいなくなり、自分一人になれば、あらゆる悩みは消えるだろうとしているのです。
人と比較してしまうから、競争になり、他人を敵だと思う、恐ろしい世界になると言うのです。
看護師のためのアドラー心理学 人間関係を変える、心に勇気のひとしずく (看護師のしごととくらしを豊かにする) [ 岩井俊憲 ] |
解決策に「人生の目標」
これを解決するには、「人生の目標」を持つことを挙げていて、人間の行動面と心理面の在り方に言及します。
(行動面)1.自立すること。2.社会に調和して暮らせること。
(心理面)1.私には能力があると言う意識。2.人々は私の仲間であると言う意識。
これが重要だとしています。
「承認欲求」を否定するものとして、人は他人の期待を満たすために生きているのではない。
そしてもう一つ「課題への分離」として、他人と自分の課題を分離し、相互介入しないとしています。
他人の課題に介入しない。これには、「馬を水辺に連れてゆくことはできるが、水を飲ませることはできない」としています。
また、自分の課題に介入させない事が重要だとしています。
「何のために生きるのか」の命題。
そして「何のために生きるのか」の命題に対して「…つまり人は、いろいろと不満があったとしても、「このままのわたし」でいることの方が、楽であり安心なのです。」
「健全な劣等感とは、他者との比較の中で生まれるものではなく「理想の自分」との比較から生まれるもの」だと、しているのです。
「嫌われる勇気」には、何をしなければならないのでしょう。それには、こんな事が有効なのではないでしょうか。
(1)今、現在抱えている問題のみに集中する。
(2)他の人と、自分を比べない。
(3)人をコントロールしようとしない。
(4)自分に何が出来るか棚卸してみる。
きっと、若い頃「嫌われる勇気を出せ!」と言った、飲んべいの上司は、人と比べない生き方をしていたんだと思いますが、
毎晩のように、酒の席へ私を誘っていた事は、「人をコントロールしない」と言う趣旨に反するように思ってしまいます。
イチロー先生も、アドラーも、自分に自信が持てる事が、見つけられれば、
それを磨き、自分を高める事で、他人の意見や、他人の動向に一喜一憂しないで、生きてゆく術を探し出せと言っているように思えます。
自分の考え方の持ち方一つで、世界は変えられるのでしょう。
「イチロー先生の嫌われるの大好き、アドラーの嫌われる勇気」への3件のフィードバック
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