『チーズはどこへ消えた?』(原題:Who Moved My Cheese?)は、アメリカの医学博士・心理学者で、
アメリカのビジネス界のカリスマである、スペンサー・ジョンソン(英語版)が著した寓話に基づくビジネス書です。
この本は、1998年にアメリカで出版されました。
『チーズはどこへ消えた?』の人気とは。
当初の発売から既に22年経過していますが、今でも高い人気を誇り、
2019年時点で、全世界で累計2800万部を超える、ベストセラーとなっています。
日本では、2000年に翻訳書が発売され、2020年12月時点では105刷・408万部のロングセラーです。
日本版の出版に際して、ハードカバーの本家・アメリカ版ではなく、軽いタッチのイギリス版が採用されています。
日本版は、出版プロデューサーの平田静子さんによってプロデュースされました。
平田さんは、「年末年始に企業のトップが、訓示をする時のネタになる」と踏んで、
上場企業100社の社長に、手紙を添えて献本したところ、
大手メーカーの社長が、年始の挨拶で紹介した事で、火が付いたと言われています。
また、アメリカで既にヒットしていたので、
発売前に、外資系企業から「研修で使いたい。まとめ買いしたんだけど…」と言った内容の問い合わせが来ていたようです。
ビジネスパーソンに爆発的に売れたのは、
当時のソニーのCEOだった出井伸之さんが、社員に薦めたのが、きっかけだとも言われ、これでも火がつきました。
販売担当からは「ソニーの社員が書店に来て、みんな『チーズ』『チーズ』と言っている」といった話も入って来たそうです。
著者のジョンソンは2017年に逝去しましたが、その翌年、本作の続編原稿が残されている事が、明らかになりました。
そして、続編では『チーズはどこへ消えた?』の本編では、変化に対応出来ずに、
取り残された小人を主人公に据えた作品となっていて、
日本では2019年に『迷路の外には何がある?』のタイトルで出版されたのです。
更に『チーズはどこへ消えた?』は、2016年に大谷翔平選手の愛読書として取り上げられ、再び注目を浴びる事となりました。
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『チーズはどこへ消えた?』要約。
ある国で小人のヘムとホーと、ネズミのスニッフとスカリーが住んでいて、迷路で食料のためのチーズを探しまわっていました。
ある日、苦労してチーズステーションCで、大量のチーズを発見しました。
ところがある朝、二匹のネズミが着くと、チーズが無くなっていたのです。
ネズミは毎朝、変わったことがないかを調べていて、チーズが古くなっていたことも知っていたので、特に驚きませんでした。
そして、二匹のネズミは、すぐさま新しいチーズを探しに飛び出しました。
二人の小人はチーズが無いことに気づくと、いつも通りチーズがあるものだと思っていただけに、とても驚き、
「チーズはどこへ消えた?」と言ったのです。
しかしながら、二人の小人は周囲を調べてチーズが無くなった原因を調べることをせず、
チーズが戻ってくるのを待ち、その場所から動くことをしませんでした。
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チーズを探しに行くべきか?
しかし、小人のヘムは「ここは居心地がいいんだ。探しに行ってチーズがなかったらどうするんだ?」と、聞く耳を持ちません。
もちろんホーは、行動しても、何も変わらないかもと言う不安がありましたが、
見つけている自分を想像したら「最後にはチーズは見つかるに違いない」と勇気が出て来たので、
迷路での気づきの名言。
「なぜすぐに立ち上がり、チーズを探さなかったんだろう?」と思いながら先に進みました。
ホーは本当に迷路に行くべきか不安になりましたが、壁に言葉を書きつけしばらく見つめました。
「もし恐怖がなかったら何をするだろう?」
今になって分かるのは、何が起きているかを注意して見ていたら、変化に備えていたら、
あんなに驚くことはなかっただろうと思ったのです。
これからは変化が起こるのを予想し、いつ変化が起きるか感じ取り、それに適応する準備をしようと思いました。
「常にチーズの匂いをかいでみること、そうすれば古くなったのに気がつく」
このヘムの言葉は、注意深く現況を見ていたら、その変化に気づき、そこから未来を予測出来るかも知れないと言うことです。
ヘムは迷路に出る見切りを付けただろうかと考え、
自分が迷路に踏み出した時のことを思い出し、更にヘムに向けて壁に書きつけました。
「新しい方向に進めば新しいチーズがみつかる」
ホーは気づいたら恐怖がなくなっていて、気分がよくなっていました。
その理由がわかったので壁に書きつけました。
「恐怖を乗り越えれば楽な気持ちになる」
ホーは一層いい気分を味わうため、心の中でチーズをより細かいところまでイメージし、そしてまた壁に書きつけました。
「まだ新しいチーズが見つかっていなくても、そのチーズを楽しんでいる自分を想像すればそれが実現する」
そして、ようやく、チーズステーションを見つけたので、中に入ってみると中は既に空っぽでした。
もっと早く見切りをつけていれば、ここでたくさんのチーズを見つけることが出来たのにと思いました。
「古いチーズに早く見切りをつければ、それだけ早く新しいチーズが見つかる」
迷路にチーズを探しに出てから、ホーの考えは変わりました。
以前は、変化は間違っていると思っていたが、今は予期していようがいまいが、
変化は起こるのが自然なことだと分かったのです。
そして壁に書きつけました。
「従来通りの考え方をしていては、新しいチーズは見つからない」
そして、考えを変えると、行動が変わることを知りました。
すべては、どう考えるかにかかっているのです。
「新しいチーズをみつけることができ、それを楽しむことが出来ると分かれば人は進路を変える」
さらに考えたことを書きつけました。
「早い時期に小さな変化に気づけば、やがて訪れる大きな変化にうまく適応できる」
そしてついに、見たことのない量のチーズを見つけたのでした。
そこには、ネズミのスニッフとスカリーの姿もありました。
『迷路の外には何がある?』 –『チーズはどこへ消えた?』その後の物語 [ スペンサー・ジョンソン ]
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『チーズはどこへ消えた?』から学ぶ。
『チーズはどこへ消えた?』の大事なところは、
小人たちが自分たちが馬鹿にしていたネズミたちに負け、逆にネズミたちから学ぶところです。
ネズミは未来の変化を予測し、素早く動き、ビジネスや人生で成功する人たちを象徴しています。
ネズミたちは大量のチーズを見つけても、休むことなく朝早くから働き続けます。
このままチーズを食べ続けたらなくなってしまう未来を予測し、食べ尽くすと同時に、新しいチーズを探しに行きました。
人は成功しているほど、その成功にしがみつきます。
たとえ成功したとしても、一生続くわけではないことを自覚し、未来を予測して素早く行動することが大切なのです。
恐怖心を超える。
予測して行動すると言っても、迷路の先には、何が待っているのか分かりません。
悪いことばかりが頭をかすめ、「何が起こるか分からない恐怖心」が先行して踏み出せない時があります。
しかし、小人のホーは「変わらなければ破滅する恐怖心」を原動力として、重い腰を上げたのです。
恐怖心は時として、現状を変える原動力にもなり得るのです。
変化への適応力。
登場人物の中で多くの人が最も共感できるのは、なんとか恐怖心に打ち勝ってチーズを探しに出かけるホーではないでしょうか。
成功体験は大事です。それが自信に繋がるからです。
しかし過去の成功体験にしがみつくと、世の中の変化や世間のニーズに乗り遅れ、
気づいた時には、たくさんあったチーズは消えてしまっているかもしれません。
世の中の変化に合わせて、自分が変わるのは難しいことです。
しかし、戻らない世の中の変化を、認めて適応しなければなりません。
多くの人が「それは分かっている」と思うかもしれません。しかし行動出来ている人はほんの一握りと言うのが現実なのです。
これに対して、小人のヘムは、チーズが無くなったという突然の「変化」に対応できず、迷路の中に残った小人です。
変化に対応できず、動くことができなかった主人公のヘムは「負け組」のように見えるかもしれません。
でも、実際は変化を前にして、動ける人はそんなに多くありません。
その時に動けなかったからとい言って、全部ダメという訳でもありません。
「これは私の話だ」と思って読んでくださる読者には、多くの気づきを与えて呉れる本なのです。
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小人のホーが学んだことは。
■変化は起こる。変化を予期しよう。
■小さな変化に気づくこと。そうすれば、やがて訪れる大きな変化にうまく備えることが出来ます。
■変化に素早く適応すること。遅れれば適応出来なくなる。
■変化を楽しむ。
そして最大の障害は、自分自身の中にあることを認めることです。
自分自身が変わろうとしなければ好転しません。
ホーはヘムが自分自身の手で居心地の良さから抜け出し、恐怖を乗り越えてこの場所まで来てくれることを願いました。
チーズと迷路の関係とは。
この本は、大量にあったはずのチーズが忽然と消えてしまう事態となり、
幸せを掴みとるために、大切な事とは何をすべきかと問い掛けています。
この寓話では、「迷路」はビジネスの行く先や人生を象徴し、
「チーズ」は恵まれた仕事や愛情など手に入れたいものを象徴しているのです。
「チーズ」とは、私たちが人生で求めるものです。例えば、仕事、家族、財産、健康、精神的な安定などです。
一方「迷路」とは、チーズを追い求める場所です。それは、例えば、会社、家庭、生活などです。
私たちの身の回りの物を、チーズと迷路に置き換えて物語が構成されていますが、
一番伝えたいことは、状況の急激な変化に如何に対応すべきかでしょう。
たった96ページしかない本書ですが、ビジネスや人生について考えさせられる一冊となっています。
マンガでわかる チーズはどこへ消えた? / スペンサー・ジョンソン 【本】
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ビジネスに生かせるために。
仕事上で、頭では分かっているのに、勇気が無くて、リスクが大きいと感じて、行動に移せないことがあります。
そんなためらいを打破するために、ビジネスをより良く理解することで、行動は変えられることを教えて呉れています。
『チーズはどこへ消えた?』が、言いたいことを一言で表すなら「変化を恐れるな」です。
例えば、長年取引している大口取引先があったとします。その取引先は、あなたの会社の70%の売上シェアがありました。
そんな優良先を、競合他社が黙っている訳ありません。価格競争で仕掛けられるかもしれません。
そのためにも、新規先を開拓して、シェア率を低下させたり、常に取引先の動向に注視することは、とても大事な仕事です。
いつの時代も、変化に順応できなかったものは、淘汰されて来ました。
変化を恐れないことの大切さは、普遍性が高いので『チーズはどこへ消えた?』は、これ程長く、読まれ続けているのでしょう。
頭では変わらなきゃいけないと分かっているのに、理由をつけて変わろうとしていない方にこそ、手に取って欲しい一冊です。
変化にどう対応したら良いのか?
迷路にあった大切なもの(チーズ)がなくなるという突然の「変化」に、
ある者は状況を変えようと迷路を飛び出し、ある者はそのまま迷路に残って現状を維持しようとします。
でもその決断は、自分自身が決めなければならず、それが、その先の明暗を分けてしまうのです。
1冊目の『チーズはどこへ消えた?』は、変化にどう対応するか、をテーマにしていましたが、
続編の『迷路の外には何がある?』は、
変化に対して行動出来なかった人はなぜ動けなかったのか、どうしたら動けるようになるのかを説いています。
自分の人生は自分しか変えられません。
勇気を出して、新しいチーズを探しに行きましょう!
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