ビジネスの世界では「人」「モノ」「金」が三大要素と言われていますが、その第一に来るのが「人」でしょう。
ビジネスは人との接点で生まれ、ビジネスが成約するか否かは人に掛かっています。
また、同僚や上司との関係が、上手くいかないとストレスになり、思い悩んで体調を崩したりもします。
デール・カーネギーの『人を動かす』
そんな人間関係にまつわる事を教えて呉れるのが、デール・カーネギーの著書『人を動かす』です。
この本は、人間関係にまつわる30の原則を、物語調で学ぶことが出来るようになっています。
『人を動かす』のタイトルが示すように、
この本は、他者をいかに動かすかと言うことの本質を、さまざまな物語を通して教えて呉れています。
人はどのように他人と関わるべきかを、
「人を動かす3原則」「人に好かれる6原則」「人を説得する12原則」「人を変える9原則」など、
さまざまな“原則”を、具体的なエピソードとともに紹介しています。
それでは、それぞれの原則について見てみましょう。
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「人を動かす3原則」
1.盗人にも五分の理を認める。
2.重要感をもたせる。
3.人の立場に身を置く。
「人を動かす3原則」では、人を自発的に動かすための基本を示しています。
デール・カーネギーは、これを3つの原則とし、どんな相手であっても非難することをせず、相手を認めることを示唆しています。
それは、相手に心からの賛辞を示し、自己重要感を満たすことだと言います。
自分のことではなく、相手の立場に立ち、望みは何なのかを考え、
そこに自分の望みの標準を合わせることが、人を動かすための重要な点であるとしているのです。
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「人を動かす3原則」の名言。
「他人の欠点を直してやろうという気持ちは、確かに立派であり賞賛に価する。
だが、どうしてまず自分の欠点を改めようとしないのだろうか?」
「人を批評したり、非難したり、小言を言ったりすることは、どんな馬鹿者でも出来る。そして、馬鹿者に限って、それをしたがるものだ。」
「人を動かす秘訣は、この世に、ただ一つしかない。
自ら動きたくなる気持ちを起こさせること──これが、秘訣だ。」
「人間の行為は、何かを欲しがることから生まれる。」
「人に好かれる6原則」
1.誠実な関心を寄せる。
2.笑顔を忘れない。
3.名前を覚える。
4.聞き手に回る。
5.関心のありかを見抜く。
6.心から褒める。
人に好かれる6原則では、相手のことを尊重し、好まれるための原則が書かれています。
常に笑顔で接して呉れて、自分に関心があり話を聞いてくれ、自己重要感を高めてくれるような人は、
どんな人でも無下には扱ってはいけないのです。
自然と人に好かれ、行動を促すことは、簡単なようで、なかなか出来ている人が少なく、
そう言うことは、人間関係の基礎となっています。
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「人に好かれる6原則」の名言。
「心にもない笑顔──そんなものには、誰もだまされない。」
「自分とつきあって相手に楽しんでもらいたい人は、まず相手とつきあって自分が楽しむ必要がある。」
「幸福は外的な条件によって得られるものではなく、自分の気の持ち方一つで、どうにでもなる。」
「自分のことばかり話す人間は、自分のことだけしか考えない。」
「人を説得する12原則」
1.議論を避ける。
2.誤りを指摘しない。
3.誤りを認める。
4.穏やかに話す。
5.イエスと答えられる問題を選ぶ。
6.しゃべらせる。
7.思いつかせる。
8.人の身になる。
9.同情を寄せる。
10.美しい心情に呼びかける。
11.演出を考える。
12.対抗意識を刺激する。
「人を説得する12原則」では、「人を動かす3原則」、「人に好かれる6原則」をベースに具体的な方法が書かれています。
自分の意見を相手に受け入れてもらい、説得するためには、まず相手を尊重する必要があります。
対立することを避け、相手の立場と考えを尊重し、穏やかな言動で接することで、
相手はこちらの意見を、受け入れやすくなるのです。
その上で相手の良心に訴え、相手が興味を持ち、楽しめるような演出をすることで、
結果的に、相手がこちらの望む行動をとるようになります。
D・カーネギー マンガで読み解く人を動かす [ デール・カーネギー ]
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「人を説得する12原則」の名言。
「議論に負けても、その人の意見は変わらない。」
「人から押しつけられた意見よりも、自分で思いついた意見のほうを、我々は、遥かに大切にするものである。」
「相手は間違っているかもしれないが、相手自身は、自分が間違っているとは決して思っていないのである。」
「人間は一般に、同情を欲しがる。」
「人を変える9原則」
1.まず褒める。
2.遠回しに注意を与える。
3.自分の過ちを話す。
4.命令をしない。
5.顔をつぶさない。
6.わずかなことでも褒める。
7.期待をかける。
8.激励する。
9.喜んで協力させる。
人を変えるには、まず相手を褒め、自尊心を満たし、期待をかけ、自分は変われると言う自信を持たせることです。
そして、実際以上の評価を相手に伝えることで、相手のやる気を刺激し、自発的な行動を促します。
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「人を動かす」唯一の方法とは。
あるいはチームの方針通りに動いてくれなかった時、あなたはどうしますか?
そんな時には、相手を非難して、その行為や考えを、改めさせようとするケースも、あるのではないでしょうか。
しかし、デール・カーネギーは、
「人の気持ちを傷つけることで人間を変えることは絶対にできず、まったく無益である」と断言しているのです。
「他人のあら探しは、何の役にも立たない。相手は、すぐさま防御体制を敷いて、何とか自分を正当化しようとするだろう」と。
そして、感情的になって非難することなど「どんな馬鹿者にもできる」とも。
確かに、仮に相手を言い負かすことが出来たとしても、
それによって相手があなたの意見に納得して、考えを変えてくれるとは限らないし、
ましてや好意を寄せてくれることもないでしょう。
では、間違った行動をとっている人や、自分の意図と異なる行動をとる人を、
自分の思い通りに動かそうとする時、デール・カーネギーならどうするでしょう。
その主張はいたってシンプルです。
それは、「自ら動きたくなる気持ちを起こさせること」だと言うのです。
そして、そのために「相手の欲しがっているものを与える」ことが、唯一の方法であると述べています。
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「相手の欲求」に注目して、人を動かす。
相手の欲しがっているものは、千差万別なんてと、思う人もいるかもしれませんが、
デール・カーネギーはその疑問に対し、
「相手を論理の動物だと思ってはならない。相手は感情の動物」である、とその理由を解説していきます。
人間が行動を起こす中で、最も強い衝動のひとつとされるのが、「自分が重要人物でありたい」という欲求です。
すなわち“自己の重要感”に着目し、それを満たしてあげることが大切なのだと説きます。
この欲求は、食欲や睡眠欲と同様に、とても強い欲求でありながら、自分で解消出来るものではありません。
それには、他者とのコミュニケーションが必要となるため、自分だけで満たされることがないからです。
だから、あなたが相手の「自己の重要感」を、満たしてあげることが効果的なのだと言うのです。
そして、相手の“自己の重要感”を満たしてあげるために有効な手段となるのが、「褒めること」だとカーネギーは言っています。
それには、ただ、闇雲に「すごいね」と褒めるのではなく。
どんな小さな部分でもいいので、決して批判せずに心から、そして具体的に称賛するのが大切だと言うのです。
デール・カーネギーは「本書から“常に相手の立場に身を置き、相手の立場から物事を考える”と言う、
たったひとつのことを学び取っていただければ、成功への第一歩がすでに踏み出されたことになる」としているのです。
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『人を動かす』を人生に応用する。
ガミガミ怒ってばかりいる上司、どうしても好きになれない同僚など、付き合うことがどんなに難しい相手でも、
やり方次第では、よい関係性を築くチャンスが眠っているとも限りません。
カーネギーは、本書を通して、こうしたポジティブな姿勢を貫いています。その姿勢は、人間に対する深い愛情を感じます。
それはまるで、人を動かすため必要なのは、テクニックではなく、人を愛することなのかもしれません。
13歳から分かる!人を動かす カーネギー 人間関係のレッスン 感想(3件) |
デール・カーネギーの生い立ち。
デール・カーネギーは、アメリカの作家で教師にして、自己啓発、セールス、企業トレーニング、スピーチおよび、
対人スキルに関する、各種コースの開発者です。
ミズーリ州の貧しい農家に生まれ、今日でも支持の高いベストセラー『人を動かす』(1936年)
(原題:How to Win Friends and Influence People、“友を得、他人に影響を与える方法”)の著者として有名です。
また、『道は開ける』(1948年)
(原題:How to Stop Worrying and Start Living、“恐れるのをやめ生き始めるには”)もとても有名です。
デール・カーネギーの著書では、「他者に対する自己の行動を変えることにより、
他者の行動を変えることができる」という考えが、柱のひとつとなっています。
また、著書の著者名がカーネギーであることから、
「鉄鋼王」のアンドリュー・カーネギーであると、勘違いしている人も多いようですが、
「デール・カーネギー」は別人であり、親戚関係などもありません。
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「ビジネス書!デール・カーネギー『人を動かす』感想・まとめ」への1件のフィードバック
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