相棒Season21第4話「最後の晩餐」の冒頭で、
美和子は亀山薫との電話で「せっかく新作料理、用意して待ってるんだからね」と、美和子スペシャルを予告して始まりました。
右京さんたちは、偶然乗ったタクシーで、血痕のついたマフラーを手にします。
血痕のついたマフラーが事件の発端
事件性を感じた右京さんと亀山薫は、直前に乗っていた男が下車した麻布へと、タクシーを向かわせます。
そこでマフラーの持ち主が、堂島(矢柴俊博さん)と言う独身貴族だと知ることになります。
堂島が何かの事件を起こして、自殺の危険性もあると察した右京さんは、
堂島が『CITY LIGHITS』の屋号が冠されたバーへ入るのを追い、警察と名乗らず接触します。
堂島はマスター特製のカレーを食べたいと言いだしますが、
マスターが「今日はカレー無いんです」と言うと、堂島はどうしても食べたいと食い下がったのです。
そのカレーには独特の風味があり、隠し味のするカレーだと堂島は言ったのです。
すると右京さんは「ふと食べたくなる。最後の晩餐に一品だけ選ぶとしたら、そんな料理かもしれません」と発したのです。
そこで右京さんは、自分たちが食材を買い求めて来るので、カレーを作って貰うよう頼みます。
右京さんは、堂島の家の前に、廃棄された家具と、モダンな空き箱が置かれていたことから、
堂島が若い女性と、暮らすつもりではないかと判断します。
その若い女性は、実は堂島の娘であり、前科持ちの同棲相手がいましたが、
いまは所在不明で、さらに堂島がその男と接触していたことを突き止めます。
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『CITY LIGHITS』邦題『街の灯』
ドラマでは、『CITY LIGHITS』の名前が冠されたバーで物語が進み、そのラストシーンの解釈が粋に使われています。
そのバーには、チャーリー・チャップリンの『街の灯』ポスターが飾られていて、
バーの屋号からしても、チャップリンに思いを寄せるお店でした。
右京さんは、「『CITY LIGHITS』(邦題『街の灯』)を、チャップリンが監督・主演するサイレント映画の傑作」と言い、
「笑いと涙が同居する、チャップリン映画のすべてが詰まっている」と絶賛しました。
それに対して堂島は、この映画のラストシーンは悲しい、切ないと言いますが、
バーのマスターは、ハッピーエンドで良かったと語り、観客の感情によって、見方が違って見えることを示していました。
『相棒』では以前にも、実在の人物が登場する話しがありました。
それは、『相棒』Season19第6話三文芝居で、シェークスピアの『お気に召すまま』を引用したシーンでした。
「この世は舞台、人はみな役者」と言う、
シェイクスピアの『お気に召すまま』の一節の言葉に対して、うれしそうに、なぜか食いつく右京さんがいたのでした。
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物語は右京さんと亀山薫の行動で、長年無気力に生きていた堂島が救われることになります。
若い女性は堂島の子供ではなく、本当の子供はバーのマスターだったのです。
「あなたの本当のご家族は直ぐ近くにいたんですよ」右京さんはこう諭すと、「人生の価値は自分次第」と付け加えます。
「僕は何にも見えていなかったんだなぁ~」と堂島が悟りました。
そして、バーのマスターの作るカレーに込められた、隠し味は、かつて堂島が愛した女性が作っていた梅酒だったのです。
事件解決後、亀山薫のスマホに送られてきたのは、真っ青なカレーでした。
進化を遂げた美和子スペシャルが、レベルアップ?していたのです。
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映画「街の灯」のあらすじ。
ここで、チャップリンの「街の灯」を振り返ってみましょう。
ある街に暮らす浮浪者の男(チャールズ・チャップリン)はある日、街角で出会った盲目の花売り娘に、一目ぼれします。
彼女は男がタクシーを使っていると勘違いし、金持ちだと思い込みます。
その夜男は、妻と離婚して、自殺を試みた富豪を助けて友達となると、
男は富豪から貰った金で、娘から花を買って紳士の振る舞いをします。
男は病気の彼女のために働き、献身的な世話をしますが、彼女が家賃の滞納で、立ち退きを迫られていることを知ると、
何とか金を工面したい男は、八百長ボクシングに手を出しますが敗れてしまいます。
途方に暮れる男は、酔っぱらった富豪と偶然再会すると、
事情を話して大金を貰うのですが、運悪く屋敷の中に強盗が潜んでいて、富豪は頭を殴られ気絶してしまいます。
警察を呼んで事情を話しましたが、酔いの醒めた富豪は男のことを覚えていません。
強盗に疑われた男は、慌てて逃げ出し、花売り娘の家に駆け込むと、
家賃と目の手術代として、お金を渡しますが、その帰り道、男は警察に捕まってしまいます。
数年後、刑務所を出所した男は、目が治った花売り娘と偶然再会します。
男の正体を知らない娘は、憐れみの気持ちから、浮浪者の男に一輪のバラを差し出すします。
するとその時、彼女は男の正体に気づくのでした。
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ラストの表現の意味。
彼女は憐れみの気持ちから、浮浪者の男に一輪のバラと、コインを差し出すします。
そしてそのコインを手渡した時、彼女は浮浪者の手の感触に気が付きました。
目の前の浮浪者が、自分を救った男だと気づいた娘の口から漏れた一言は、「You(あなたでしたの)?」だけでした。
それに対して、チャップリンの浮浪者は小さく頷いたのです。
浮浪者は「目が見えるようになったの?」娘は「今は見えるようになった」
そして「THE END」となるのでした。
観客は感動の再会を期待しますが、それとは裏腹に、娘の顔は満面の笑みとは言えない表情でした。
彼女は浮浪者を裕福な男と思っていたので、現実の姿に落胆したのかもしれません。
それに対する浮浪者も、何とも言えない、照れや申し訳なさを含んだ笑顔を浮かべます。
わずか数秒の間に、両者の間で感情が複雑に行き来している様子を、見事に描いている名シーンです。
そして、このラストシーンを右京さんは、ハッピーエンドにも、バッドエンドにも読み取れると語ったのでした。
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『街の灯』が問いかけているもの。
映画史史上最高の一つですが、この時のシーンには見る側によって、様々な解釈が出来るようになっています。
浮浪者のチャップリンと、盲目の花売り娘は、出会いのタイミングでは、同じステージとして捉えられていますが、
盲目の花売り娘が、目の手術により視力を取り戻すことで、
以前と同じように、浮浪者と同じステージに立つことが出来るののだろうか?と言う問いです。
ここが、この作品の主題になっているのではないでしょうか。
だからこそ、『街の灯』のラストシーンで、チャップリンの演技も、花売りのヴァージニア・チェリルの演技も、
なんとも絶妙な演技になっているように見えます。
そして、この先の展開は、観客に考えて貰うような、エンディングになっているのです。
映画を観た後、観客は考えます。
「さて、この二人はこの後どうなるのだろうか?」
「夢の世界の富豪が浮浪者と知った時の、花売り娘の心情はどうなるだろうか?」
そして、「正体を明かした浮浪者チャップリンの心境はどうなるだろうか?」と、考えさせます。
それは、私たちに、
目に見える世界で、人を見かけや、経済力で判断するのが正しい選択なのかと、問いかけているように思えてなりません。
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「最後の晩餐」VS「街の灯」
相棒「最後の晩餐」では、親の遺産を食い物にして来た独身貴族の堂島は、
人とも深い関係にならず、金を盾にした生活を送っていてましたが、
実際には、自分の直ぐそばに、本当のご家族がいましたし、彼を心配し愛情を注いで呉れる女性がいたのです。
それで右京さんは「人生の価値は自分次第」と言うと、
堂島は「僕は何にも見えていなかったんだなぁ~」と、自分の行いを悔いたのです。
チャップリンの「街の灯」では、盲目の花売り娘が、浮浪者と思わずに出会いますが、
浮浪者の援助により、手術で目が見えるようになり、浮浪者と再会した時、男の正体に気づくのでした。
その時、観客はどんな感情を抱くのか、その回答を保留にしたままエンディングとなり、その後の展開を観客に託しています。
目に見えるものが全てではない、
目に見えるものを見ようとしない、
それを決めるのはあなた自身だと、両者は言っているようです。
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杉下右京の腕時計が気になります。
杉下右京はブリティッシュスタイルのダークスーツにサスペンダー、
腕に輝くのは、アメリカの歴史と共に歩んで来たブランド・ハミルトンの腕時計です。
1910年~1930年代に栄えたアールデコを取り入れた、クラシカルで趣深いモデル・ボストン(H13431553)。
センターセコンドではなく、スモールセコンドと言うクラッシックスタイルの腕時計で、さりげなくオシャレを演出していて、
何故か!気になって仕方ありません。
HAMILTON ハミルトン H13431553 ボルトン BOULTON メンズ 腕時計 【長期保証3年付】
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