相棒22第6話「名探偵と眠り姫」マーロウ矢木の再登場とレイモンド・チャンドラー




相棒Season22第6話「名探偵と眠り姫」マーロウ矢木の再登場

相棒シリーズでお馴染みの、チャンドラー探偵社の、あの私立探偵・マーロウ矢木明が12年ぶりに再々登場しました。

矢木明は探偵小説好きの冴えない中年探偵で、

取り分けチャンドラーのハードボイルド小説が大好きで、マーロウに成りきっている人物なのです。



マーロウ矢木の再々登場


マーロウ矢木の最初は「登場」2回目が「再登場」そして今回は再々登場ではなくて「名探偵と眠り姫」でした。

以前の登場シーンでは、特命係と捜査協力をして、事件解決に至りましたが、今回も捜査協力はあるのでしょうか。

と言ってたらドラマの冒頭から、マーロウ矢木明が若い女性を連れ出すシーンから始まり、

一体全体マーロウ矢木明は、何をやっているの?と言う展開になりました。

そんな中、特命係の右京さんを名指しで、匿名の情報提供がありました。

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「眠り姫誘拐事件」


それは、「17年前に起きた、当時5歳の少女の誘拐事件の犯人は殺された」という投書だったのです。

問題の事件は、老舗デパート蔵本屋の令嬢の里紗(潤花さん)が、睡眠薬で眠らされて連れ去られた経緯から、

当時の週刊誌が「眠り姫誘拐事件」と煽り、世間の耳目を集めた事件だったのです。

この成人した里紗役を務めたのが、元宝塚歌劇団・トップ娘役の潤花さんでした。

潤花さんにとって2023年6月の宝塚退団後、この「相棒」が初の映像作品となりました。

ドラマでは、被害者の少女はすぐに救出され、犯人は投身自殺を遂げるという幕切れでしが、

今回の情報提供は、その顛末に一石を投じるものでした。

過去の事件のトラウマから、外出を恐れて自宅に引きこもりがちになった里紗は、まさに“深窓の令嬢”として美しく成長して来ました。

ところが、その里紗が自身の婚約お披露目パーティーを前に、会場からこつ然と姿を消す事態が発生したのです。

その婚約者は老舗の和菓子屋の息子でした。

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杉下右京への挑戦状


そして更に、彼女の失踪とほぼ同時に、

「警視庁特命係・杉下右京殿 眠り姫事件の犯人は殺された。至急真相を解明されたし」と、

まるで右京さんへの挑戦状のような、情報提供が警視庁に届いたのです。

挑戦状とも受け取れる投稿を受け、

亀山薫から「受けて立つんですね?」と問われた右京さんは、「勿論、ご指名ですから」と即答したのです。

捜査に乗り出した右京さんは、亀山薫と共に蔵本屋の関係者のもとを訪れます。蔵本屋は創業135年を誇る百貨店です。

すると、蔵本屋の一族は、丁度、里紗の婚約発表を大々的に行うために、顔を揃えていました。

しかし、会場のホテルでは、肝心の里紗が、何者かの手引きで会場を抜け出し、姿を消すという騒動が起きていたのです。

里紗の父親は、里紗から2時間前に連絡があり「私は大丈夫、心配しないで」と連絡が合った事を明かしました。

すると右京さんは「何者かの協力があったかもしれませんね」と、偽装誘拐があったのではないかと疑います。

防犯カメラの映像から、里紗の脱出を手助けしたのが、特命係と浅からぬ因縁がある、

私立探偵の矢木明(高橋克実さん)だと気づいた右京さんと亀山薫は、早速、彼の事務所を訪れます。

とそこには、ホテルの館内図がプリントアウトされていて、矢木明が事件に絡んでいる事が明白となります。

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チャンドラーの『プレイバック』の名言


そんな中、矢木明はレイモンド・チャンドラーの『プレイバック』の名言を気取って語ります。

それは、里紗を自分の事務所に避難させた矢木明が、里紗のために食事を運んで来た時でした。


「タフでなければ生きていけない、優しくなければ生きる資格がない。」


すると里紗は、その言葉がレイモンド・チャンドラーの『プレイバック』一節だと当てたのでした。


そんな中、右京さんは、バレエも辞めて、家に籠る里紗をオーロラ姫に例えます。

オーロラ姫(眠れる森の美女)とは、邪悪な魔女の呪いのせいで、生を受けた城から遠く離れて暮らす姫で、

身分を隠し、ブライア・ローズとして育てられた彼女は、

いつか幸せな夢が叶うと信じ自分の望みを口にする、純粋さと無邪気さを持っていました。

また誰にでも親切で優しく、美しい声で歌い踊ることが好きな明るい性格の持ち主でもあったのです。

すると右京さんは、畳み掛けるようにチャイコフスキーの『眠り姫』についても言及したのです。

クラッシック音楽好きな右京さんとしては、博識の源泉を抑えられなかったのかもしれません。

プレイバック [ レイモンド・チャンドラー ]



チャイコフスキーの『眠り姫』


チャイコフスキーの『眠り姫』とは、

バレエ音楽『眠れる森の美女』の前作であるバレエ音楽の『白鳥の湖』が不評に終わったため、

チャイコフスキーは長いこと「バレエ音楽」からは離れていました。

しかし、1888年にロシアのマリインスキー宮廷劇場の総支配人イワン・フセヴォロシスキーからバレエ音楽の作曲依頼を受けます。

それがフランスの作家シャルル・ペロー原作の『眠りの森の美女』を題材にしたバレエ音楽でした。

『眠りの森の美女』を1889年8月に完成させ初演し、これが大成功をおさめました。

このことがきっかけで、後日『白鳥の湖』も再演され、これも大好評になったのです。

里紗の縁談を決めたのは、それが実現すれば次期社長にして呉れると言う父親が目論んだものでした。

チャイコフスキーの眠れる森の美女 [ ケイティ・フリント ]



チャンドラーの『長いお別れ』の名言


その後右京さんが矢木明をバーに呼び出すシーンでは、矢木がチャンドラーの『長いお別れ』の名言を語ります。


「開店したばかりのバーが好きだ。しんとしたバーで味わう最初の静かなカクテル――何ものにも代えがたい」


その原文和訳は、このようになっています。

 

「夕方、開店したばかりのバーが好きだ。店の中の空気もまだ涼しくきれいで、すべてが輝いている。バーテンダーは鏡の前に立ち、最後の身繕いをしている。ネクタイが曲がっていないか、髪に乱れがないか。バーの背に並んでいる清潔な酒瓶や、まぶしく光るグラスや、そこにある心づもりのようなものが僕は好きだ。バーテンダーがその日の最初のカクテルを作り、まっさらなコースターに載せる。隣に小さく折りたたんだナプキンを添える。その一杯をゆっくり味わうのが好きだ。しんとしたバーで味わう最初の静かなカクテル――何ものにも代えがたい」

レイモンド・チャンドラー 「ロング・グッドバイ」(村上春樹訳)


すると右京さんは、「マーロウが親友と酒を酌み交わすシーンですね。」と切り返したのです。

『ロンググッドバイ(長いお別れ)』の中で、主人公の私立探偵フィリップ・マーロウと、

テリー・レノックスの二人が友情を育む場所は、L.AのヴィクターズというBARです。

レノックスは億万長者の娘シルヴィアの夫で、どこか陰を宿す不思議な男。

やがて彼は妻殺しの容疑者として追われる身となってしまうのですが、

ヴィクターズで酒を交わしながら、マーロウは彼に友情を抱いてゆくのです。

長い別れ (創元推理文庫) [ レイモンド・チャンドラー ]

【抽出】

心に残る有名なミステリー小説の名言・一文・決めセリフ。



ギムレット


そして、レノックスはギムレットを好んで飲みました。

「本当のギムレットはジンとローズのライムジュースを半分ずつ、他には何も入れないんだ」と言うセリフも有名です。

この「ギムレット」以前の回でもたびたび登場していました。

そして、事件解決の切り札となったのが「ヨモギ」の香りだったのです。

そして右京さんは最後に、

「長い眠りから目覚めたようで良かったですね」

それに対して矢木明が「取り合えず祝杯といきますかね」

勿論祝杯は「ギムレット」だったのでしょう。

最後に、「ギムレット」の由来は、

イギリス海軍の軍医だったギムレット卿が、艦内で配給されるジンを将校らが飲み過ぎることを憂慮し、

健康のためライムジュースを混ぜて、薄めて飲むことを提唱したのが、起源とあるとの事です。

大いなる眠り [ レーモンド・チャンドラー ]




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