『ティファニーで朝食を』は、小説家トルーマン・カポーティが1958年に書いた中編小説で、ニューヨークを舞台に、自由奔放に生きる女性主人公を描いています。
この小説に登場するヒロインは、いささか風変わりな名刺を、自宅アパートの郵便受けに貼っています。
「ミス・ホリー・ゴライトリー」と書かれた名前の下には住所はなく。こう書いてありました。「旅行中」。
『ティファニーで朝食を』は、カポーティの代表作で、圧倒的な売り上げを記録しました。
そこにはオードリー・ヘップバーンとの関係性が大きく左右したのかもしれません。
この作品は1961年にオードリー・ヘプバーン主演で映画化され、
ヘップバーンの魅力と、ヘンリー・マンシーニ作曲の、「ムーンリバー」の楽曲と共に、
今もなお、普及の名作として親しまれています。
ティファニーで朝食を (講談社英語文庫) [ トルーマン・カポーティ ]
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映画『ティファニーで朝食を』冒頭。
その映画のファーストシーンでは、ヘンリー・マンシーニ作曲の、「ムーンリバー」の曲が流れる中、
朝靄のニューヨーク5番街に、1台のイエローキャブが走って来て、ティファニーの前で停まります。
タクシーから降りて来た女性は、髪をアップにして、黒のノースリーブのロングドレス、サングラスをかけた、
ホリー役のオードリー・ヘップバーンでした。
彼女は白い紙袋から、パンとコーヒーを取り出し、ショーウインドーを、眺めながらパンをかじります。
たぶんクロワッサンでしょうか。
そして、食べ終わると近くのゴミ箱に、食べたあとのゴミを捨て、朝霧のニューヨークの街へと、歩き去って行くのでした。
『ティファニーで朝食を』の題名は、
主人公のホリー・ゴライトリーが言う「ティファニーで朝食を食べるご身分」と言う例えでした。
当時ニューヨーク5番街にあるティファニーは宝石店であり、レストランではありませんでしたが、
映画の反響を受け2017年にブランド初となる、ダイニングスペースがオープンしたのです。
それ程、この映画とその題名は、強い影響力を発揮しました。
ティファニーで朝食を/映画ポスター オードリー・ヘップバーン フレーム付
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ティファニーで朝食を (新潮文庫 新潮文庫) [ トルーマン・カポーティ ]
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『ティファニーで朝食を』あらすじ。
1943年の秋、無名の語り手の「僕」は、ホリー・ゴライトリーと友人になります。
二人はマンハッタンのアッパー・イースト・サイドにあるアパートメントの住人同士でした。
ホリーは18歳で、ニューヨークのカフェ・ソサエティ・ガールとなった田舎娘でした。
カフェ・ソサエティとは、当時のジャーナリストが、1930年代の上流社会の社交界を表現した言葉で、
夜な夜な洒落たレストランやクラブで繰り返される、セレブたちの社交界のことを指しています。
そして社交界と言う言葉の響きには、恋の香りが欠かせません。
そこではセレブな男たちが、美しい女性を傍に置き、ジャズの生演奏をバックにお酒を飲み、語り合うそんな場だったのです。
そこは、若く美しい女性たちが、お金を稼ぐチャンスでもあったのです。
ホリーは、セレブな男性との交際で、生計を立てる天真爛漫な女性です。
また刑務所にいる謎の老人と面会をすることで金を受け取る、どこか怪しげな世界にも足を突っ込んでいました。
多くの男たちがホリーに夢中になり、語りての「僕」も少しずつ彼女に惹かれていきます。
その一方で、ホリーの存在が「まやかし」である事も感じていました。
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束縛を嫌うホリーの生い立ち。
ホリーの生い立ちは孤児で、兄と二人で浮浪していたところを、ある田舎の家庭に拾われます。
しかし従来から、束縛されないな生活を送っていたホリーは、束縛を嫌い、家を飛び出してしまいます。
彼女は誰かに所有される事を嫌い、また何かを所有することも拒むのでした。
語りての「僕」とホリーが、乗馬に出掛けたある日、事件が起きます。
ホリーが面会していた刑務所の老人はマフィアで、彼女は麻薬密売のための情報屋の役割を担わされていたのです。
呆気なく警察に逮捕されたホリーは、収容された病院から脱走し海外に逃亡します。
新たな住所が決まったら、語りての「僕」に連絡すると話していましたが、
それ以来、彼女から手紙が届くことはありませんでした。
彼女の自宅に貼ってあった、
「ミス・ホリー・ゴライトリー 旅行中」と言う意味が分かったような気がしました。
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カポーティとヘップバーンの関係。
1961年に映画化された『ティファニーで朝食を』は、ヘップバーンが新境地を見せた名作ですが、
著者のカポーティにとって、その内容は芳しいものではなかったそうです。
カポーティは、主演にマリリン・モンローを第一候補にすることを条件に、映画化を承諾していました。
しかし、この話はなくなり、カポーティのイメージとは異なる、ヘップバーンに出演依頼がなされたと言います。
これについては、「モンロー側から辞退の申し出があった」、
「プロデューサー陣が彼女を適役だと思わなかった」など、諸説言われているようです。
またヒロインの人物像も、雨の中でふたりが熱い抱擁を交わすラストシーンも小説とは違い、
これらの改変について、カポーティは不満を抱いていたと言うことでした。
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