営業マンの基本は、セールス。
随分昔の話しなんですが、私が若い頃、営業教育の一環として、新規勧誘の実践訓練が、ありました。
各地から、数名づつの営業マンが集められ、ある地域を勧誘したのです。
その日、集められたのは20人の営業マンでした。それぞれが別々の地区を担当して、2日間に亘って勧誘するのです。
新規先セールスが、自分を鍛える。
苦手な新規セールス。
私は新規セールスが、特に苦手でした。どうしても、新規のお宅や、事務所へ伺う事が嫌だったのです。
出来れば、そんな仕事は、自分の仕事じゃない。自分はしたくない仕事だと、思っていました。
既存のお客さまに、甘えていた自分。
既存のお客さまの元へ、訪問すると、皆さん優しく、すんなり受け入れてくれますが、新規先はそうは行きません。
どこの、誰かも分からない人物を、お客さまは、簡単には受け入れて呉れません。だから、苦手だったのです。
でも、今回は、苦手などと言ってはいられません。20名の営業マンの競争なのですから、やるしかないのです。
セールスの開始前に、本社の営業強化課長から、「これは君たちの将来に関わる訓練なので、真剣に取り組むように」に続き、
「この2日間で最低でも、2契約を獲得するように」とハッパが掛かりました。
訪問セールス開始。
セールスの1日目。
私は第1日目の、午前中が重要だと思っていました。午前中は、在宅率が高いからです。
午後になると、買い物などに出掛ける、ご家庭が増えてしまい、面談率が下がり、そのため、成約率が下がるからです。
また、狭い地区を勧誘するので、あまり多くの対象者が居ないことから、
2日目になると、同じお宅を、また勧誘しなければならず、2度目の訪問は、きわめて、難しくなるからでした。
何故かと言うと、2日目にも同じお宅を訪問すると、初日で断られている場合には、
昨日も断ったじゃないかと言われてしまい、それから先、セールスが、上手く出来なくなってしまうからでした。
この場合の、切り替えし話法が、上手く出来なかったので、何とか、1日目に、獲得しなければと思っていたのです。
私は焦っていました。1日目の午前中に契約が取れず、午後に入っても、芳しくなかったからです。そして、1日目が終了してました。
夕礼の時間に、営業強化課長から「この2日間で、2契約取れなかった者は、来月行われる特別実践訓練に、参加して貰うことになるので、頑張るように」と更に、ハッパが掛かったのです。
これは、やばい事になったと、みんなが思い始め、夕礼は重い空気の中で終わりました。
私は同期のK君が、この実践訓練に、一緒に参加していたので、終業時間になると、早々に退社し、2人で居酒屋へ直行したのでした。
セールスの2日目(最終日)。
第2日目は、最終日です。今日は何とかして、絶対に特別実践訓練だけは、阻止しなければならないと思っていました。
この訓練に参加する者は、レベルが低い営業マンの、レッテルを貼られてしまうからでした。
2日目は、昨日、当たりを付けていた2軒で、何とか午前中に契約が取れたので、後は流して終わりました。
みんなも、昨日の夕礼のハッパが効いたのか、ほぼ全員が、契約が取れたようで、安堵感が広がっていました。
そんな中で、私の先輩が、10件の契約を獲得して、戻って来たのです。
みんなも、ビックリして先輩を称え、営業強化課長も、満面の笑顔で、先輩を迎えました。
契約を獲得するために、努力していた。
先輩との帰り道で「どうしてあんなに取れたんですか」の問いに「お前だけに教えてやる」と答えを、教えてくれました。
昨日、終業して、みんなが帰った後に、先輩は、チラシに、名刺をホチキス留めして、更に名刺の余白部分に、こんなことを記載したそうです。
「明日訪問させて頂きます〇〇です。私は、明日しかお目に掛かれません。どうぞ、ご検討よろしくお願います。」
この言葉を添えて、200軒ほど、チラシを投函して来たと言う事でした。時間にして、1時間30分程掛かったようです。
「その効果があって、予想以上に成約出来たよ」と話してくれました。
仕事が出来る差とは。
先輩が終業後、チラシ投函を頑張っている間、私は同期と、居酒屋へ直行し、ほろ酔い気分だったのです。
この差なんだな!仕事って言うのは、自分で、どうするか考えて、行動する努力が大切な事を、その先輩は教えてくれました。
「あなたが居たから取引した。」
今回の研修で、新らしくお客さまになって頂いたお客さまは、その地区を担当する、社員に引き継ぎましたが、
本来は、自分が、その後、担当者となり、そのお客さまのアフターフォローをして行く訳です。
お客さまは、神様です!
その時に、お客さまから、「あなたが居たから取引した。」と言う、嬉しい言葉を掛けてくださる、お客さまがいます。
そうです。そのお客さまは、我が社と始めて取引して頂いた、お客さまとなり、
たとえ、担当者が変わっても、〇〇さんが居たから、取引を始めたと言ってくださる。大切でありがたい、お客さまなのです。
正に、お客さまは、神様です。