アイザック・ウォルトン『釣魚大全』静かなることを学べ。

 

アイザック・ウォルトンの『釣魚大全』。

「The Complete Angler」(釣魚大全) は、イギリスで一番、いや世界で一番有名な、釣りの本です。

その作者は、アイザック・ウォルトンで、彼は生涯を賭けて『釣魚大全』(The Complete Angler」)を執筆したのでした。

この本は、釣り好きであれば、読んだ方もいらっしゃるかもしれません。

The Complete Angler。

特に、川釣りが趣味の方には、とても魅力ある本です。

世界的ロングセラー。

今から360年前に書かれたこの本は、300年以上のロングセラーを続けていて、

度々の戦争があるたびに、人々が心の拠り所にしたようで、その都度、売れ続けて来たようです。

『The Complete Angler』(釣魚大全)は、1653年に初版が発行されました。

この本は、釣りの楽しみの、読み物であると共に、故事伝承や、随筆の要素が詰まった読み物です。

ですから、単純な釣りのハウツー本として、内容を期待する人には、チョットそぐわないかもしれません。

しかし、その奥深い釣りの散文に、心が洗われるような気がする本なのです。

アイザック・ウォルトンはこの本を、60歳の時に執筆したようなのです。つまり、作家としては遅咲きだったのです。

釣魚大全 完訳 1/アイザック・ウォルトン/飯田操

イギリス スタッフォード生まれ。

アイザック・ウォルトン。

アイザック・ウォルトン(1593~1683)は、イギリスの随筆家で、伝説作家です。

スタッフォードで生れて、ロンドンで金物店を営み、とても成功したようです。

しかし、妻や6人の子供たちに先立たれ、苦難の人生を送ったようで、

この『The Complete Angler』(釣魚大全)を執筆し、90歳で没しています。

静かな田園生活の中で、主人公の釣り人と、猟人などとの会話を、対話形式で物語が構成されており、

釣りや、田園、自然を描いています。

そして、この本に多く挿入されている挿絵が素晴らしいんです。繊細に描かれた魚の描写には、見入ってしまう程です。

英国のフライフィッシング史 (つり人ノベルズ) [ 椎名重明 ]

 

 

イギリスの田園生活を瑞々しく描く。

牧歌的な世界を、上質な散文で綴る。

この本の発行当時は、ピューリタン革命の頃で、

そんな状況の中で、牧歌的な世界を、静けさを背景に、上質な散文で仕上げているのです。

この当時は、イギリスの産業革命には、まだまだ前の時代ですから、静謐な自然と、田園生活を瑞々しく描けたのでしょう。

「瞑想する人のためのリクエーション」。

この、『The Complete Angler』には副題があって、「瞑想する人のためのリクエーション」と言います。

世界や日本の歴史と比べても、この時代に釣りが、瞑想する人のためのリクレーションだと言っているところに、

イギリス文化の豊かさが、垣間見えると思いませんか。

釣りをする行為が、瞑想と融合すると、言うことなのでしょうか。

凡人には、釣りは釣れないと、落ち込むものですし、人が自分よりたくさん釣れると腹が立ちます。

釣魚大全【電子書籍】[ アイザック・ウォルトン ]

静かなることを学べ。

「Study to be quiet」 。

そして、この本の一文に、「Study to be quiet」(静かなることを学べ)と言う言葉が入っています。


せっかちな性格の人は、釣りがうまい。

釣りは、せっかちな性格の人の方が上手だと言います。

魚がなかなか釣れないと、エサが悪いんじゃないかと、エサを変えて見たり、

仕掛けが悪いんじゃないかと、道糸やハリスの長さを調整して見たり、

重りを付けて川底の方を狙って見たりするそうで、結果的に釣りの研究をしているようなので、その分、釣れるようなのです。

釣り人は、釣りを始めた頃には、たくさん釣れることを望み、

一通り釣れるようになると、今度は、より大物が釣りたいと思うのです。

釣りは、その域に達すると、釣り糸を垂れているだけで幸せな気持ちになり、釣れても、釣れなくても良い境地に行くようです。

しかし、まだまだ、邪念のある私は、たくさんも、大物も、両方、釣りたいと思ってしまうのでした。

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「Study to be quiet」。

ウォルトンは語る、「静かなることを学べ」。

だから、釣りをする時に「静かなることを学べ」とアイザック・ウォルトンは言ったんでしょうか。

人生の中で、煩わしい出来事や、雑事は、いつの時代でも、どんな環境でも、ある筈です。

そんな中でも、自分を失わずにいることは、大切な事だと思います。だから、彼は言っているんでしょう、「Study to be quiet」と。  

「Study to be quiet」とは、「努めて静かであれ」「穏やかであることを学べ」、「泰然自若と生きよ」などに、訳されるでしょうが、

どれが一番しっくりするでしょうか。やはり、原文のままが、一番しっくり来るようです。「Study to be quiet」。

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