釣りを知らない人からすると、じっとして釣り糸を垂れている釣り人を見て、
何であんな事をして面白いの、暇人のやる趣味じゃないのと思われることでしょう。
でも、そんな時の釣り人の頭の中は、釣れない原因は何なんだろう、餌が悪いのではないのか、仕掛けが合わないのではないかと、絶えず自問しているのです。
だから、のんびりしているのではなく、あれこれ考えてせっかちに細工を考えているのです。
たぶん、太公望と言う言葉が、なんとなく暇人を連想させるのかもしれません。
釣りのことわざ・名言を厳選。
釣りに関することわざや、名言は世界各国にあります。
そんな中から、釣りを通して、人生の指針になるような言葉を紹介します。
まずは、あまりにも有名なことわざで、芥川賞作家の開高健さんが、よく紹介していた言葉で名言です。
中国の釣りに関する古い諺。
これは「中国の釣りに関する古い諺」として紹介されています。
・一時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい。
・三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい。
・八日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい。
・永遠に、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい【中国古諺】
実は、この中国のことわざには、別バージョンがあって、こんな諺です。
・一日幸福でいたかったら、床屋に行きなさい。
・一週間幸福でいたかったら、結婚しなさい。
・一ヶ月幸福でいたかったら、良い馬を買いなさい。
・一年幸福でいたかったら、新しい家を建てなさい。
・一生幸福でいたかったら、釣りを覚えなさい。 【中国古諺】
この言葉が引用されたのは、確か開高健さんの著書『オーパ!』でした。
開高健さんは無類の釣り好きで、世界各地の大物魚を釣る旅をしていて、それを『オーパ!』で著書として出版する一方で、
その釣りの様子は、テレビでも流れ、ビデオ化もされていました。
開高健さんの釣りの集大成が『私の釣魚大全』『フィッシュオン』ではないでしょうか。
この2冊の本からは、開高健さんの釣りに対する、純粋な喜びや感動が伝わって来ますし、
彼がその経験に心を揺さぶられて、自然に書かれたもののような気がします。
だから、釣りをしない人にも十分に、楽しめる作品になっているのです。
そして、釣魚大全(コンプリートアングラー)は、アイザック・ウォルトンの『釣魚大全』へと、繋がってゆくのです。
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開高健さんの名言。
「釣りをしているときは外からは静かに見えるけど、実は妄想のまっただ中にある。このとき考えていることといえば、原稿料のこと、〆切日のこと、編集者のあの顔、この顔、それからもっと淫猥、下劣、非道、残忍。
もうホントに地獄の釜みたいに頭の中煮えたぎってる。それが釣れたとなったら一瞬に消えて、清々しい虚無がたちこめる。」
開高健 「地球はグラスのふちを回る」より
「釣りとは絶対矛盾的、自己統一である。」 開高健
「顔のヘンな魚ほどうまいものだよ。人間もおなじさ。醜男、醜女ほどおいしいのだよ。」
開高健 「夏の闇」より
開高健さんは『オーパ!』の取材で、世界各地の、釣り人たちが垂涎の的となる、釣り場を釣り歩きました。
「永遠に、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい。」の中国での釣りは、淡水の巨大魚イトウ釣りだったと思います。
開高健さんはルアーがお得意でした。
大物と格闘した後、焚火の元で、グラスにウィスキーを注ぎ、天と地に感謝の杯を上げる、サントリーウィスキーのCMのシーンが印象的でした。
開高 健 電子全集3 釣り紀行 私の釣魚大全/フィッシュ・オン【電子書籍】[ 開高健 ]
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開高健さんのフライフィッシング。
そんな開高健さんが、始めてフライフィッシングをしたのがイギリスでした。
フライフィッシングはイギリスが発祥で、そんな釣りをして見たいと、イギリスに行ったことがありました。
ロンドンの釣りの名店で、釣り用のジャケットやウェダーを購入し、その伝統の奥深さに敬意を表していました。
しかし、イギリスでのフライフィッシングでは、残念ながら釣れなくて、チョット残念な結果だったんです。
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【関連】
アイザック・ウオルトンの名言。
アイザック・ウオルトンの『釣魚大全』の名言。
『The Complete Angler』(釣魚大全) は、イギリスで一番、いや世界で一番有名な、釣りの本です。
その作者は、アイザック・ウォルトン(1593年~1683年)で、
彼は生涯を賭けて『釣魚大全』(The Complete Angler」)を執筆したイギリスの随筆家で、伝記作家です。
この『The Complete Angler』には副題があって、「瞑想する人のためのリクエーション」と言い、1653年に初版が発行されました。
今から360年前に書かれたこの本は、300年以上のロングセラーを続けていて、
度々の戦争があるたびに、人々が心の拠り所にしたようで、その都度、売れ続けて来ました。
この本は、釣りの楽しみの、読み物であると共に、故事伝承や、随筆の要素が詰まった読み物です。
静かな田園生活の中で、主人公の釣り人と、猟人などとの会話を、対話形式で物語が構成されており、釣りや、田園、自然を描かれているのです。
彼は妻や6人の子供たちに先立たれ、苦難の人生を送ったようで、
この『The Complete Angler』(釣魚大全)は、彼が60才の時に執筆し、90歳で没しています。
「おだやかなることを学べ。」
「釣り師は、すべての魚を愛する。」
「芸術家として生まれた者はいないように、釣り師として生まれた者はいない。」
「魚釣りは数字のようなものだ。というのは、完全にマスターできないからだ。」
完訳釣魚大全(1) (平凡社ライブラリー) [ アイザック・ウォルトン ]
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【関連】
「魚は餌だけを見て釣り針に気がつかない。人間は儲けだけを考えて危険に気がつかない。」 【中国の諺】
中国では釣りに関する諺が多くあるように思われますが、それも「太公望」と言う人物と言葉が、影響しているかもしれません。
「釣りの話をするときは両手をしばっておけ。」 【ロシアの諺】
釣り人は秘密主義者です。どんな餌が食いが良いのか。どんな仕掛けが効果的か。そして、どこが釣りの穴場か。
これらの事を、釣り人は殆ど話しません。
良い釣りの環境や条件を話しませんが、一方で、釣れた魚の事は、自慢したくて仕方がないのです。
自分が如何に優秀な釣り師であるか。誰よりも多くの魚を釣ったか。
そして、誰よりも大物を釣り上げたのか、自慢したくてたまらないのです。
釣り場では、聞きもしないので、これ見よがしに釣った魚を見せる輩が大勢います。
だから、釣りの話では、だんだんその釣り上げた魚のサイズが、大きくなってしまうのです。
最悪の日の釣り。
「最良の仕事の日よりも最悪の釣りの日の方が、まだマシである。」
【ニュージーランドの諺】
仕事があるから、そのご褒美の釣りの日は愉しいものです。
週一で釣りに出掛ける釣り人は、ウィークデーは、どこに釣りに出掛けるか考え、その仕掛けを作り、週末を待っています。
当日、何時間も掛けて釣り場に通い、まったく釣れない日だってあるのですが、
釣り人にしてみれば、ロッドを振っているだけでも愉しいのです。
「もし釣りが仕事の妨げになるのなら、仕事の方をあきらめなさい。」
スパース・グレイ・ハックル
「釣りをしている夫の姿を見たことのない女房は、自分がどれほど辛抱強い男と結婚したか気がつかない。」
エドガー・ワトソン・ハウ(米国の作家)
「釣り竿は一方に釣り針を、もう一方の端に馬鹿者をつけた棒である。」
サミュエル・ジョンソン(英国の詩人・批評家)
井伏鱒二の釣りの名言。
井伏鱒二の釣りの名言。
「釣りは盗むもんだ、聞くもんじゃない。」
井伏鱒二は、釣り好きで知られていて、筆名の鱒二は川魚の名前が由来です。そして、釣りに関しての著書も多数執筆しています。
『川釣り』岩波新書 1951年、岩波文庫 1990年。
『釣師・釣場』新潮社 1960年 のち文庫(改版)、講談社文芸文庫 2013年。 『釣人』新潮社 1970年。
『川釣り』は、1952年(昭和27年)に岩波新書から刊行されました。内容は戦後に書いた釣りに関する、随筆や感想や紀行文などを書いたものです。
主な釣りの舞台として鮎釣りでは、伊豆の河津川、相模川、笛吹川など、
ヤマメ釣りでは狩野川、富士川の支流の釜無川や、下部川が釣り場となっていて、釣り好きにはたまらない作品です。
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【関連】
佐藤垢石の言葉。
「鮎を釣るなら石を釣れ。」
佐藤垢石「魚の釣り方より」
「釣り人は山川草木の一部たるべし。」
「釣り人は、山や川、草や木の一部となるべきだ。」
「釣師ではなく釣士でなければならない。」
特に有名なのが、「鮎を釣るなら石を釣れ。」です。
鮎は遡上すると、川底に沈んでいる石のコケを食べることから、良い石の周りには、鮎が付くことを表した言葉です。
今では鮎釣りと言えば「友釣り」が一般的になっています。
鮎が他の鮎を追い払う習性を利用した釣り方で、
おとり鮎に針を付け、石周りに泳がすと、鮎がおとり鮎に攻撃を仕掛けて来て、針に掛かるという釣法です。
【POD】【大活字本】釣りの文学選(一)-文士達が綴る21篇 (響林社の大活字本シリーズ) [ 佐藤垢石 ]
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魚の棲む場所。
魚はどの流れにいるのか?
「水清ければ大魚無し」
范曄 (宋の歴史家・政治家)
きれいな川に、魚が多いように思いますが、そうでもないんです。
川魚は身を隠せるところで、餌が多く流れてくるところに、頭を上流に向けて、流れて来る餌を待っているのです。
餌は石の裏に付いていた川虫が、流れに揉まれ流れたり、カゲロウなどが羽化して水面に上がって来たのを待っているのです。
初夏になり川虫などが羽化してしまうと、魚の餌は陸生昆虫に変わります。
蟻や蜘蛛、バッタなどが、水辺に近い枝から、落ちて流れて来るのを待っているのです。
だから、清き水より、餌の多いい流れが、釣果を左右してしまうのです。
夢枕獏さんの言葉。
「釣れない釣り人は哲学者。釣れた釣り人はただのお調子者。」
神奈川県小田原市出身の作家で、安倍晴明を主役とした『陰陽師』シリーズは、晴明ブームのきっかけとなりました。
プロレスと、釣りと旅行が趣味で、世界各地の釣り場を訪ねています。
釣りに関しては、「川の学校」で講師を務めるなど造詣も深く、
中でも鮎釣りに熱中しておりチンチン釣り(餌釣り)を得意としていて、
解禁日ともなると、執筆意欲が削がれるほど、鮎に焦がれてしまうと言うのです。
釣りに関しての著書は、『本日釣り日和 釣行大全』『釣り時どき仕事 』などがあります。
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ジェームス・ヘドンさんの名言。
「釣りを知らないことは人生の楽しみの半分を知らないことだ。」
この言葉は、中国の古諺、永遠に、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい。 に通じるものがあります。
ヘドンのルアーは、日本ではコアな釣りファン向けのイメージが強いですね。
アーネスト・ヘミングウェイの名言。
アーネスト・ヘミングウェイが残した名言です。
「釣れない時は、魚が考える時間を与えてくれたと思えばいい。」
ヘミングウェイは、1917年、高校卒業後に地方紙の見習い記者となりますが退職。
翌年、赤十字の一員として、北イタリアのフォッサルタ戦線に赴き、重傷を負ったのです。
戦後はカナダ・トロントにて「トロント・スター」紙のフリー記者をつとめ、特派員としてパリに渡りました。
パリで画家や詩人たちが集うサロンを開いていた米国人作家のガートルード・スタイン、スコット・フィッツジェラルドらとの知遇を得て小説を書き始めます。
特に、『華麗なるギャツビー』で知られる、フィッツジェラルドは、彼を絶賛していたようです。
パリ滞在中の、1926年に『日はまた昇る』を発表します。
ヘミングウェイは行動派の作家であり、スペイン内戦にも積極的に関わり、その経験を元に『誰がために鐘は鳴る』、
1929年には『武器よさらば』などの長編小説を発表し、作家としての地位を確保します。
1952年に『老人と海』を発表し、ピュリッツァー賞を受賞し高い評価を受けたのです。
狩猟や魚釣りが趣味で、大物釣りに情熱を燃やしていました。
晩年を過ごしたフロリダのキーウエストには、ロッドやリールが大切に保存されていたのです。
移動祝祭日 (新潮文庫 新潮文庫) [ アーネスト・ヘミングウェイ ]
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「釣りは鮒に始まり鮒に終わる。」 【日本の諺】
「釣りのことわざ・名言から学ぶ釣りの時間と人生の歩き方。」への2件のフィードバック
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