シャーロックホームズと、イギリス産業革命の関係性。 

 

ホームズの舞台は、ベーカー街221B。

アーサー・コナン・ドイルが執筆したシャーロックホームズは、19世紀後半のロンドンを舞台にしています。

そのシャーロックホームズが下宿した場所こそベーカー街221Bです。

Bと言うのは、建て増しなどした証で、Aが始めなので1階、Bは次なので2階になるようです。

ホームズとワトソンの出会い。

「緋色の研究」(A.Study in Scarlet)。

代表作「緋色の研究」(A.Study in Scarlet)は、  シャーロックホームズが下宿した家へ、伝記作家ジョン・H・ワトソン医師が、共同生活者としてやって来ます。

そして、あの有名な場面です。シャーロックホームズは始めて出会ったワトソンに対して、アフガニスタンに従軍し、

戦場で左肩に重傷を負いイギリスに送還された軍医でしょうと、言い当てた推理を披露するのです。

そんなホームズの観察力、推理力に驚かされるようにして、読者を推理小説の世界へ誘うのでした。

そんなホームズが活躍したのは19世紀後半のロンドンですが、この時期はイギリスで産業革命が起きていた時期でもあるのです。

緋色の研究改版 (新潮文庫) [ アーサー・コナン・ドイル ]

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18世紀半ば~19世紀に起きた産業革命。

イギリスの産業革命。

産業革命は18世紀半ば~19世紀に掛けて起きた、一連の産業の変革と、それに付随した社会構造の変革を指します。

19世紀後半はヴィクトリア朝時代でもあり、イギリス産業革命の絶頂期になります。

機械による生産、大量の商品、植民地化政策が行われ、

ロンドンの人口は、19世紀初期に85万人だったのが、19世紀末になると700万人に膨れ上がってしまったのです。

綿織物の製造工程は、それまで個々に農家が行っていて、品質にムラがあったものを、

工場に集約し、分業生産をする事で均一化され、高品質の製品が出来るようになりました。

これが、工場でものを作る社会となり、産業革命に繋がって行くのです。

シャーロック・ホームズの冒険 / 原タイトル:The adventures of Sherlock Holmes[本/雑誌] (創元推理文庫 Mト1-1 シャーロック・ホームズ全集) (文庫) / アーサー・コナン・ドイル 深町真理子

イギリスは世界の工場。

世界の工場。

産業革命は、鉄製品を中心とする工業製品を作り出し、蒸気機関車、鉄道の発展に繋がって行き、

イギリスは「世界の工場」と、呼ばれるようになって行ったのでした。

産業革命により商品が大量に流通するようになり、

紅茶、砂糖、たばこ、綿織物などの商品が、大量に届くようになったのです。

17世紀のイギリスでは人口の4分の3が農村部で暮らしていましたが、

産業革命の19世紀になると、人口の4分の3が、都市部で暮らすようになって行ったのです。

世界最初の鉄道が1825年に開通し、1836年にはロンドンも鉄道が到来しました。

鉄道や地下鉄が作られ、蒸気機関車が地下鉄となって走っていたようで、今ではとても考えられない光景だった事でしょう。

シャーロック・ホームズの事件簿 / 原タイトル:THE CASE-BOOK OF SHERLOCK HOLMES (創元推理文庫 Mト1-5 シャーロック・ホームズ全集)[本/雑誌] / アーサー・コナン・ドイル/著 深町眞理子/訳

時間厳守の始まりと、遅刻にペナルティ。

産業革命によって、人が工場で働くようになった事で、就業時間が決まり、遅刻というペナルティが発生しました。

それまでの農村の仕事は、自然を相手にした仕事だったので、就業時間厳守の概念が無かったと言います。

シャーロック・ホームズの思い出 / 原タイトル:THE MEMOIRS OF SHERLOCK HOLMES[本/雑誌] (新潮文庫) (文庫) / コナン・ドイル 延原謙

霧にむせぶロンドン。

産業革命の弊害。

産業革命の弊害も起きました。資本家や経営者が、長時間労働を強いらすようになったのです。

それまでの仕事の形態が、熟練工が一連の作業工程を一人で行っていたものを、

分業化して、誰もが出来る作業工程にしたことで、長時間働かせればする程、利益が出るようになった為でした。

また、都市に人口が集中するようになり、

インフラ整備の不足で、伝染病や貧困、そして、工場で使う石炭の恒常的燃焼で、スモッグが多発したのです。

その頃の平均寿命が、20歳だったと言う説もあるそうです。

それが、「霧の都ロンドン」の異名を持つ事になり、

シャーロックホームズもベーカー街221Bの、探偵事務所の2階の窓から、霧にむせぶロンドンを眺めていたのでしょうか。

人口の増加、犯罪の多発、社会不安などがあって、警察組織の編成も行われて行きました。

その一方で、都市の発展で、都市交通の整備が始まり、ラッシュアワーが既に発生していたようです。

シャーロック・ホームズの失われた災難 / 原タイトル:The Missing Misadventures of Sherlock Holmes[本/雑誌] / ジュリー・マキューラス/編 ティモシー・ジョンスン/編 レイ・リースマイヤー/編 フィリップ・バージェム/編 日暮雅通/訳

産業革命で労働条件が整備された。

オンの時間と、オフの時間。

そして、時間給で働くことで、労働時間のオンとオフが明確になり、オフの時間に娯楽や、レジャーが発達したと言うのです。

一方、労働者の労働条件では10時間以上働かせない。

10歳以下は働かせない。などある程度の、雇用条件の整備が行われて来たようです。

シャーロック・ホームズアメリカの冒険 / 原タイトル:Sherlock Holmes in America[本/雑誌] (単行本・ムック) / ローレン・D・エスルマン/他著 日暮雅通/訳

シャーロックホームズが活躍した時代。

19世紀末を生きた、シャーロックホームズ。

シャーロックホームズシリーズは、1887年~1927年まで執筆されました。丁度ホームズは、19世紀末の時代を生きたのです。

産業革命により、電報は電話に変わり、馬車は自動車へ、ガス灯は電灯に変わって行きましたが、

やはり、ホームズにはガス灯が似合います。

シャーロックホームズはよく電報を使っています。

物語の構成には電報や、馬車、辻馬車などが往来する光景は、詩情をそそります。

ホームズは、産業革命と言う時代の中で、どう折り合いを付けて、事件の解決を目指していたんでしょうか。

聞いて見たい気がします。

シャーロックホームズシリーズで、自動車が登場するのは『最後の挨拶』の中です。

引退したホームズが、ワトソンのフォード車に乗るシーンがあって、

「じゃあ、エンジンをかけてくれたまえ」と、語っていたのが印象的でした。

シャーロック・ホームズの復活 / 原タイトル:THE RETURN OF SHERLOCK HOLMES[本/雑誌] (創元推理文庫 Mト1-3 シャーロック・ホームズ全集) (文庫) / アーサー・コナン・ドイル/著 深町眞理子/訳