シャーロック・ホームズ『緋色の研究』VS『相棒』杉下右京。




ホームズ『緋色の研究』と『相棒』杉下右京の相関性。

『緋色の研究』( A Study in Scarlet)は、アーサー・コナン・ドイルによる長編小説で、

シャーロック・ホームズシリーズの最初の作品で、1886年に執筆され、翌1887年に発表されました。

シャーロック・ホームズと、ジョン・H・ワトソンの出会いと、その後に起こる、殺人事件を描いた作品です。

事件の捜査が行われる第1部「医学博士、元陸軍軍医ジョン・H・ワトスンの回想録の翻刻」と、

犯行に至った歴史が導かれる、第2部(無題)の、2部構成になっています。

特に、シャーロック・ホームズが、ジョン H. ワトソンと出会うシーンは印象的で、

物語へ、読者を誘いこむ仕掛けが、組み込まれているのです。


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1887年 初版の『緋色の研究』



( A Study in Scarlet)

「第一部 元軍医局 ジョン H. ワトソン医学博士の回顧録の復刻」

1878年、ジョン・H・ワトソンは、ロンドン大学で医学博士号を取得し、

続いてネットレイ軍病院で、軍医となるための所定研修を受講しました。

そして、研修が終わると、すぐに軍医補として、第5ノーサンバーランド・フィージリア連隊に配属されます。

ジョン・H・ワトソンは、彼の旅団からバークシャー連隊に転属させられ、マイワンドの宿命的な戦闘に、参加したのです。

この戦闘中、ジェゼイル銃で肩を撃たれます。弾丸は骨を砕いたが、幸いにして、鎖骨下動脈は、ぎりぎり外れていました。

ジョン・H・ワトソンは戦線を離脱し、多数の負傷兵の一員として、ペシャワルの兵站病院へ送られました。

更に、ジョン・H・ワトソンは、腸チフスに罹ってしまいます。それは、イギリスのインド占有の呪いのような病気でした。

何ヶ月間も生死をさまよい、助からないと思われていました。しかし、意識が戻り、最悪の状態を脱した時、

医事委員会は、やせこけて消耗しきったジョン・H・ワトソンを、即日、本国へ帰還させることを決定したのです。

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イギリスに帰還したワトソン博士。


家探しを始めるワトソン。

帰還したジョン・H・ワトソンは、クライテリオン・バーに行ったのですが、

そこでバーツの病院で、彼の助手をしていた、スタンフォードという男と出会います。

ジョン・H・ワトソンは、「手ごろな値段で住み心地の良い部屋を探しているんだが、なかなかいい物件がなくてね」と話すと、

「それは、おもしろい偶然だ」彼は言ったのです。「今日、まったく同じ言葉を聞いたばかりだ。」と、同じように、住処を探している、男の存在を明かしたのです。

しかし、彼は家探しをしている男の紹介に、難を示したのです。

「君はシャーロックホームズを知らないからな」と、彼は言います。「知れば、ずっと一緒にいたいとは思わない筈だ」

その後、ジョン・H・ワトソンは、シャーロック・ホームズと対面すると、

「見たところ、アフガニスタンに行ったことがありますね」と、ホームズが語ったのでした。

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シャーロック・ホームズの容姿・外観。




身長は183センチメートル強

シャーロック・ホームズの体格と外観は、身長は183センチメートル強ですが、極端にやせているので、ずっと高く見えました。

目つきは鋭く射抜くようで、そして細いタカのような鼻があるために、表情全体には機敏さと、決断力の雰囲気があります。

アゴは突き出て角張っていますが、これも、決断力がある男の証のようです。

手はいつも、インクの染みや化学薬品で汚れていたが、指先は非常に繊細でした。

シャーロック・ホームズが、壊れやすい化学器具を扱う場面を見ると、その器用さを目にするのでした。

しかし、シャーロック・ホームズは、医学研究者ではありませんでした。

シャーロック・ホームズに、面と向かって聞いてみると、医学研究者ではないと認めます。

ホームズは学位を取ろうとしておらず、それ以外の学会に、加入するための研究もしていないようでした。

しかし特定の研究に掛ける熱意は、人並み外れたものがありました。

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得意分野以外の知識は不要?




コペルニクスの地動説を知らなかったホームズ。

独特の分野においては、膨大な量の正確な知識を持っていて、その観察眼は、本当に驚くべきものだったのです。

しかし、ホームズはその知識と同様、無知に於いても底なしでした。

現代文学、哲学、政治に関しては、ほとんど知らないようでした。

しかし何より驚いたのは、たまたま、ホームズがコペルニクスの地動説を知らず、太陽系の構成も知らないと、知った時だったのです。

この19世紀の文明人の中に、地球が太陽のまわりを回っていることを、知らない人間がいるなどと言うのは、

あまりにも途方もない話で、とても信じられなかったのです。

「知識を詰め込むたびに、知っていた何かを忘れるときが必ずやってくる。

要するに、使い道のない事実で、有用な事実が押し出されないようにするのが、最重要課題になるのだ」と、語るのでした。

シャーロック・ホームズが、特に抜きんでた知識を持っていることが、明らかになった分野を、ジョン・H・ワトソンは列挙して見ます。

それを、鉛筆で書き上げ読んでみた時、ジョン・H・ワトソンは苦笑したのです。そのリストはこのようなものでした。

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《シャーロックホームズの知識範囲》




化学・医学・毒物・犯罪学の権威。

1.文学の知識 ―― 皆無。

2.哲学の知識 ―― 皆無。

3.天文学の知識 ―― 皆無。

4.政治学の知識 ―― 貧弱。

5.植物学の知識 ―― さまざま。ベラドンナ、阿片、毒草全般には詳しい。実用的園芸に関しては知識がない。

6.地理の知識 ―― 実用的だが範囲が狭い。土壌を一目見ただけで違いを言いあてられる。

散歩のあと、ズボンについた泥はねを私に見せて、色と堅さでロンドンのどの場所の泥か説明した。

7.化学の知識 ―― 深い。

8.解剖学の知識 ―― 正確だが体系的でない。

9.異常な事件記録の知識 ―― 膨大。彼は今世紀に起きた惨事の詳細を、すべて知っているようだ。

10.バイオリンを上手に弾く。

11.熟練の木刀選手、ボクサー、剣士。

12.イギリス法について極めて実用的な知識を保有。

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シャーロック・ホームズの職業。





僕は特殊な自営業者だ。

シャーロック・ホームズの、バイオリンの技術については、リストに書いたとおりで、

非常にすばらしい腕前でしたが、ほかの技能と同じように奇妙でした。

シャーロック・ホームズは難しい楽曲を、巧みに弾くことが出来で、

リクエストすると、メンデルスゾーンのリートなど、好きな曲を弾いて呉れたのです。

そして、シャーロック・ホームズは、こう述べています。

「僕は特殊な自営業者だ。おそらく世界でただ一人だと思う。

君に説明しても理解してもらえるか分からないが、専門的な助言をする探偵だ。

ここロンドンには、公共調査官や私立探偵がいっぱいいるが、お手上げになると、僕のところに来る。

その時、正しい手掛かりをたどれるように、出来るだけの指導する。

レストレードはけっこう有名な刑事だ。最近の偽造事件が手に負えなくなって、ここに来ることになったんだ」

その話に「君は本気で言っているのか」と、ジョン・H・ワトソンは言います。

「自分の部屋を離れることなく、君は他の人間が手におえなかった謎を解決できるのか。

相手は自分の目で詳細をくまなく見てきているんだぞ?」

「もちろん解ける。僕はその方面では、ひらめきのようなものがあるのさ。時折、もう少し複雑な事件が、持ち込まれることもある。

その時は、僕も駆け回って、自分の目で状況を確認しなければならない。君は僕が多量に特殊な知識を持っているのを、知っているだろう。

僕はそれを事件に適用しているが、そのおかげで素晴らしく事が容易になっている。

推理の手続きを、君はあざ笑ったが、僕の実務には計り知れない価値がある。観察は僕にとっては第二の天性だ。

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アフガニスタンの謎が解けた。



アフガニスタンに行ったことがありますね。

君と初めて会った時、僕が君はアフガニスタンから戻ってきたと言ったら、君は驚いたようだったろう。

僕は自分で、君がアフガニスタンから来たと分かった。長い間の習慣になっているから、僕の心に浮かぶ思考の連鎖は非常に素早い。

僕は中間の段階を意識することなく、結論を導き出している。しかし、それでも段階は踏んでいるのだ。

推理の連鎖はこうだ。

『医者っぽいタイプの紳士がいる。しかし軍人のような雰囲気がある。ということは、明らかに軍医だ。彼は熱帯から来たばかりだ。

彼の顔は黒い。しかしそれは彼の肌の自然の色合いではない。

手首は色白のためだ。彼は苦難と病気を体験している。彼のやつれた顔が明白に語っている。

彼の左腕は傷ついている。彼はこわばった不自然な方法で固定している。

熱帯のどの場所が、ある英国軍医に、こんな苦難と腕の傷を与えうるか。

明らかにアフガニスタンだ』全体の思考の連鎖は、一秒とかからなかった。

その後、僕は君がアフガニスタンから来たと言ったら、君は驚いた」

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見知らぬ男の推理をするホームズ。




郵便配達員の素性を解く。

「あの男は何を捜しているんだろうな?」と、ジョン・H・ワトソンは頑強な男を指差して尋ねた。

その男は簡素な服装の人物で、不安そうに地番を見ながら、通りの向かい側をゆっくりと歩いていた。

男は大きな青い封筒を手にしており、どうやら手紙を配達しているようだった。

「あの海兵隊の軍曹上がりのことか?」と、シャーロックホームズは言った。

「自慢たらしいホラ吹きが!」と、ジョン・H・ワトソンは心の中で思った。「どんな出まかせでも、私が検証できないと分かって言っているな」

そんな考えが私の心をよぎった瞬間、見ていた男は、この家の戸口の地番を見つけて、道路を急ぎ足で渡って来ました。

大きなノックの音が響いて、階下で低い声がした。そして重い足音が階段を上がって来たのです。

「シャーロックホームズさん宛てです」彼は部屋に入って来て、ホームズに手紙を渡しながら言ったのです。

これはシャーロック・ホームズの鼻を折る、絶好の機会だと思った、ジョン・H・ワトソンは、

シャーロック・ホームズが、さっきのデタラメを言った時、こんな事になるとは、まず思っていなかった筈だ。

「ちょっと訊いていいかな」と、ジョン・H・ワトソンは、非常に穏やかな声で言った。「君の仕事は何かな?」

「便利屋です」彼はぶっきらぼうに答えた。「制服は直しに出していて、着ていませんが」

「元の職業は?」ジョン・H・ワトソンはシャーロック・ホームズに、ちょっと意地悪な視線を向けて尋ねます。

「軍曹です。英国海兵隊軽歩兵です。手紙の返事はありませんか?分かりました」

彼は踵をカチッと合わせ、手を挙げて敬礼し、出て行った。

君は本当に、あの男が海兵隊の元軍曹だという事が、分からなかったんだな?」と、ホームズは話します。

「どうやって推理したかを説明する方がややこしいな。

もし君が二足す二が四になることを証明して呉れと言われたら、それが間違いのない事実だと分かっていても、ちょっと困るだろう。

通りの向こう側にいても、彼の手の甲に大きな青い錨の刺青が見えた。それは海の香りがする。しかし態度は軍人風で、規定どおりの頬髯だ。

これで海兵隊員だと分かる。彼はちょっと尊大で、指揮命令を出してきた雰囲気がはっきり残っている。

君も、あの男の胸を張った姿勢と、杖を振る仕草を見た筈だ。

顔を見れば落ち着いた品の良い中年の男であることも分かる、 ―― これら全てから僕は確信した。彼はかつて軍曹だった」

総特集シャーロック・ホームズ コナン・ドイルから『SHERLOCK』へ



殺人事件解決の依頼手紙。




トバイアス・グレッグソンからの手紙。

届いた手紙を、ジョン・H・ワトソンが、シャーロック・ホームズに読んだのは、次のようなものでした。

「シャーロック・ホームズ様」

「ブリクストンロード、ローリストン・ガーデン三番で昨夜凶悪な事件が発生しました。

表に面した家具なしの部屋の中に男性の死体があるのを発見しました。

服装はきちんとしており、ポケットにイーノック・J・ドレバー、アメリカ、オハイオ、クレバーランドと言う名刺がありました。

盗難に遭った様子はなく、この男性の死因に関する手がかりもありませんでした。

部屋には血の跡がありましたが、死体には傷が見つかりませんでした。」

そして、その差出人は、トバイアス・グレッグソンでした。

水谷豊論 テレビドラマ史の相棒 [ 太田省一 ]


「グレッグソンはロンドン警視庁で最も切れる男だ」と、シャーロック・ホームズは言ったのです。

殺されていた中年男の家の壁には、 RACHE (ラッヘ:ドイツ語」で復讐の意)と、

血で書かれた文字があって、女の結婚指輪が落ちていたのです。

ホームズは綿密な現場検証をして、被害者が毒殺されたことや、犯人の人相・特徴を推理し、

第一発見者の巡査に事情聴取をしたりと、次々に捜査を進めた上で、新聞に結婚指輪の、拾得記事を出したのです。

それは、指輪を使って犯人をおびき出そうとしたのです。

予想通り指輪の受取人が来ますが、ホームズが推理した、赤ら顔の大男ではなく老婆でした。

しかも、その老婆を尾行したホームズは、見事に巻かれてしまいます。

一方、ロンドン警視庁のグレッグソンは、ついに犯人を逮捕したと得意満面でした。

彼が捕らえたのは、ドレバーの秘書の、スタンガスンと共に下宿していた、家の女主人の息子である海軍将校だった。

事件前日、ドレバーがそこを引き払う際に、その家の娘を無理やり連れ出そうとし、

兄であった海軍将校に、叩き出された事実があったのでした。

それが犯行の動機だとグレッグソンはホームズに言いますが、

続いてやって来たレストレイドが、秘書のスタンガスンが、宿泊先のホテルで、刺殺死体で発見されたと伝えます。

ホームズは、準備万端整えた上で、辻馬車を呼んだのです。

何事かといぶかしむ、ワトスン、グレッグソン、レストレイドの前で、

ホームズは入ってきた馭者に、あっという間に手錠をかけ、目を輝かせてこう叫んだ。

「諸君! イーノック・ドレッバーおよびジョゼフ・スタンガスン殺害の犯人、

ジェファースン・ホープ氏を紹介しましょう!」と言ったのです。

第2部は、一転してこの事件の裏に潜む、過去の深い因縁が語られる事になります。

シャーロック・ホームズの挑戦 (新訳マンガ) [ コナン・ドイル ]



『相棒』杉下右京との関係性。




警視庁特命係。

どうですか? シャーロック・ホームズの知識の数々、ドラマ『相棒』の杉下右京に通じるものがあるように思えませんか。

杉下右京は、東大法学部を首席で卒業し、キャリアとして警視庁に入庁しますが、出世争いにはまったく興味を持ちません。

しかし、事件に対しては、たぐいまれな博識を発揮し、難事件を解決して行きます。

知識は幅広く持っていて、特に、過去に起きた刑事事件に関しては、殆ど覚えているのです。

その記憶力は、一言聞いたり見たりしただけで、電話番号を覚えてしまう程です。更に、毒物に関しての知識も豊富です。

チェスが好きで、クラッシック音楽の造詣は深く、特命係の部屋にオーディオセットを持ち込む程です。

紅茶の知識は豊富で、これはロンドン警視庁(スコットランドヤード)研修当時に身に着けたようで、

事務キャビネットの中に、10客以上のティーカップコレクションを並べているのです。

こんな事が、和製ホームズの異名を持つ所以でしょうか。

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右京さんが書いた小説『孤独の研究』

紅茶好きの批評家に書いた物語。

右京さんが『相棒』の中で、小説を書いているシーンがありました。それは、Season12。第13話『右京さんのお友達』です。

あることから、紅茶好きの毒島と言う、ミステリー小説の評論家と知り合い、彼の自宅でのお茶会に誘われたのです。

そこで、右京さんは『孤独の研究』と言う、自ら書き上げた小説を持参し、彼に評価して貰うと言うストーリーです。

ここで、右京さんはシャーロックホームズにちなんで、自ら書き上げた『孤独の研究』を披露していたのです。

【関連】

相棒Season12。第13話『右京さんのお友達』紅茶のお茶会。

シャーロック・ホームズたちの冒険 (創元推理文庫) [ 田中啓文 ]



杉下右京の腕時計が気になります。

杉下右京はブリティッシュスタイルの、ダークスーツにサスペンダー、

腕に輝くのは、アメリカの歴史と共に歩んで来たブランド・ハミルトンの腕時計です。

1910年~1930年代に栄えたアールデコを取り入れた、クラシカルで趣深いモデル・ボストン(H13431553)。

センターセコンドではなく、スモールセコンドと言うクラッシックスタイルの腕時計で、さりげなくオシャレを演出していて、

何故か!気になって仕方がありません。

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