『緋色の研究』ベーカー街で、ホームズはワトソンと出会う 

 

イギリスの作家、アーサー・コナン・ドイル。

 イギリスの作家、アーサー・コナン・ドイルが執筆したシャーロックホームズシリーズは、

彼の友人ジョン・H・ワトソン博士が物語の、書き手となり、物語を進める形態の推理小説です。

シャーロックホームシリーズは、1887年~1927年の間に、60編(長編4、短編56)が公表されています。

『緋色の研究』は1887年に発表された。

ストランドマガジンで連載。

その公表は、イギリスの月刊小説誌「ストランドマガジン」でした。そこに短編を連載すると、人気を博したのです。

長編は、『緋色の研究』(A.Study in Scarlet)、『四つの署名』(The Sign of Four)、

『バスカヴィル家の犬』(The Hound of the Baskervilles)、『恐怖の谷』(The Valley of Fear)の、4編です。

短編には、『ボヘミアの醜聞』、『赤毛組合』、『まだらの紐』、『白銀号事件』など56編があります。

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ロンドンベーカー街221B。

『緋色の研究』。

その中でも、特に有名なのが、『緋色の研究』では、ないでしょうか。

シャーロックホームシリーズは、19世紀後半のロンドンを舞台にしています。

そのシャーロックホームズが下宿した場所こそが、ロンドン、ベーカー街221Bです。

Bと言うのは、建て増しなどした証で、Aが始めなので1階、Bは次なので2階になるようです。

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ジョン・H・ワトソンとの出会い。

ホームズとワトソンの出会い。 「A.Study in Scarlet」。

代表作『緋色の研究』(A.Study in Scarlet)では、 シャーロック・ホームズが下宿した家へ、

伝記作家ジョン・H・ワトソン博士が、共同生活者としてやって来ます。

伝記作家ジョン・H・ワトソン医師は、それまで、プライベートホテルで滞在していましたが、

経済的理由から下宿先を探していたのです。

シャーロック・ホームズが、初めてワトソン博士と会った時、

一目見ただけで「君、アフガニスタンに行って来ましたね?」看破したのです。

これは、ホームズの推理力を特徴づける有名なエピソードです。

この初対面のシーンは、ホームズが病院の実験室で、血液検出検査をしている最中でした。

『緋色の研究』では、物語の冒頭からホームズが科学に強いことが紹介されていて、

それが読者を「どうして?」と思わせ、物語の世界へ引き込むのです。

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そして、ホームズの推理の回答が、ワトソン博士がホームズの家に、同居人としてやって来た時に明らかになります。

シャーロックホームズはこう語ります。

「推理の連鎖はこうだ。『医者っぽいタイプの紳士がいる。しかし軍人のような雰囲気がある。と言うことは、明らかに軍医だ。

彼は熱帯から来たばかりだ。彼の顔は黒い。しかしそれは彼の肌の自然の色合いではない。

手首は色白のためだ。彼は苦難と病気を体験している。彼のやつれた顔が明白に語っている。

彼の左腕は傷ついている。彼はこわばった不自然な方法で固定している。

熱帯のどの場所が、ある英国軍医に、こんな苦難と腕の傷を与えうるか。明らかにアフガニスタンだ』

全体の思考の連鎖は一秒とかからなかった。

その後、僕は君がアフガニスタンから来たと言った。そして君は驚いた」と解説したのです。

これがあの有名なシーンです。

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シャーロックホームズの洞察力。

「あの海兵隊の軍曹のことか?」

また、ワトソン博士が路上を見てこうつぶやきます。

「あの男は何を捜しているんだろうな?」ワトソンは頑強な男を指差して尋ねました。

その男は簡素な服装の人物で、不安そうに地番を見ながら通りの向かい側をゆっくりと歩いていました。

男は大きな青い封筒を手にしており、どうやら手紙を配達しているようでした。

するとホームズが、「あの海兵隊の軍曹上がりのことか?」言うのです。

「自慢たらしいホラ吹きが!」ワトソンは心の中で呟きます。

するとその男が、家の戸口の地番を見つけて、道路を急ぎ足で渡って来ました。

大きなノックの音が響いて、重い足音が階段を上がってきました。

「シャーロックホームズさん宛てです」彼は部屋に入って来て、ホームズに手紙を渡しながら言ったのです。

そこでワトソンは、ホームズの鼻を折る絶好の機会と思い、「ちょっと訊いていいかな」「君の仕事は何かな?」と尋ねると、

「便利屋です」彼はぶっきらぼうに言い、「制服は直しに出していて、着ていませんが」

「元の職業は?」と、ワトソンはちょっと意地悪な視線を向けて尋ねます。

するとその男は「軍曹です。英国海兵隊軽歩兵です。手紙の返事はありませんか?分かりました」

男は踵をカチッと合わせ、手を挙げて敬礼して出て行ったのです。

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この2つの推理力を目の当たりした読者は、物語の世界へ引きずり込まれてしまいます。

この『緋色の研究』は、コナン・ドイルによって、1886年に執筆され、翌年1887年に発表されました。

物語は、スコットランドヤードのグレグスン刑事から、殺人事件の手紙が届き、難事件を解決するストーリーです。

シャーロックホームシリーズでは、

事件の当事者や、捜査に行き詰まった警察から、ホームズに依頼が来て、事件解決に向かう筋書きになっています。

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相棒 ワトソン医師の生い立ち。

ジョン・H・ワトソン医師。

ジョン・H・ワトソンは、少年時代を家族と共に、オーストラリアで過ごし、ロンドン大学卒業後、医学博士号を取得しました。

第二次アフガン戦争に軍医として従軍します。

そして、イギリス軍が破れた、マイワンドの戦いで負傷し、傷病兵として本国へ送還されたのでした。

ワトソンは、当初ホームズの行動に懐疑的でしたが、『緋色の研究』でホームズと行動を共にするうちに、

ホームズの事件解決に向けた観察力、推理力に驚くと共に、その功績をあっさり、グレグスン刑事の手柄に、してしまうのを見るに付け、

ホームズの活躍をいずれ、物語にして、世に発表しようとしていたのです。

緋色の研究/コナン・ドイル/延原謙

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忘れ物の天才なホームズ。

シャーロック・ホームズは忘れ物の天才です。ホームズはこんな事を言っています。

人間の頭とは「小さな屋根裏部屋」だと言うのです。

何でもかんでもガラクタを詰め込めば、肝心な時に必要なものを取り出せない。

それは「愚かな連中」のする事だそうです。

「だから、無用の知識はどんどん忘れて、有用な知識の邪魔にならないようにすることが、極めて重要なんだよ」

頭の良い人は忘れ上手と言っているようです。(緋色の研究)

シャーロック・ホームズの名言。

『緋色の研究』のセリフ。


「自分の失敗を語るのに躊躇はしない。」


この言葉は『緋色の研究』(1887年)の中で、シャーロック・ホームズが発します。

『緋色の研究』は、シャーロック・ホームズと、後のパートナーとなるワトスンとの出会いが描かれた物語です。

普通の人間は、自分の失敗を人に話すのはプライドが邪魔をしてしまい、なかなか出来ないものです。

しかし、シャーロック・ホームズはなんのてらいもなく、自分の間違いを言葉にします。

ホームズの飾らない、それでいて懐の広い性格がよく表れている言葉です。

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ホームズと、イギリス産業革命。

イギリス産業革命。

そんなホームズが活躍したのは、19世紀後半のロンドンですが、

この時期は、イギリスで、産業革命が起きていた時期でもあるのです。

時代が大きく変わり、明かりは、ガス灯から電灯に変わり、

通信手段は、電報から電話へ、交通手段も、馬車や辻馬車から、自動車に変わって行く中で、

シャーロックホームシリーズでは、そんな時代にあっても、古き良きイギリスを描き出しています。

産業革命によって、都市に人口が集中するようになり、インフラ整備の不足で、伝染病や貧困、

そして、工場で使う石炭の恒常的燃焼で、スモッグが多発したのです。

その頃の平均寿命が、20歳だったと言う説もあるのです。

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霧にむせぶロンドンを見ていたホームズ。

「霧の都ロンドン」。

それが、あの「霧の都ロンドン」の異名を持つ事になりました。

産業の急激な発展に、社会インフラが、追いついていなかったのでしょう。

そして、シャーロックホームズは、ベーカー街221Bの、探偵事務所の2階の窓から、霧にむせぶロンドンを眺めていたのでしょう。

人口の増加、犯罪の多発、社会不安などがあって、警察組織の編成されて行ったようです。

その一方で、都市の発展で、都市交通の整備が始まり、ラッシュアワーが既に発生していたと言います。

こんな時代の変化を、シャーロック・ホームはどう見ていたんでしょうか。

ビクトリア朝の権威と、産業革命による大量生産、大量消費時代が、足音を立てて忍び寄ってくる、

そんな時代の到来を感じていたに違いありません。

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