ジェフリー・アーチャー著『ケインとアベル』小説あらすじ。




ジェフリー・アーチャー『ケインとアベル』

ジェフリー・アーチャーの『ケインとアベル』は、150万部を売り上げた、伝説のミリオンセラー小説です。

ポーランドの孤児と、ボストンの名家の御曹司。この二人の宿命のライバルが、絡み合う運命の物語です。

その面白さと、ストーリー性は抜群で、読みだしたら止まらなくなる程でしょう。



『ケインとアベル』




(Kane and Abel)

『ケインとアベル』(Kane and Abel)は、ジェフリー・アーチャーが、1979年に発表した小説で、

イギリスでテレビドラマ化され、日本でも放送されました。

書名は旧約聖書『創世記』に登場する兄弟相克の物語「カインとアベル」(Cain and Abel – ケイン(Kane)は姓であるが、

英語読みの音が同じ)にちなんで付けられています。

20世紀の現代史を背景に、生い立ちの異なる2人の主人公を、

双方の視点から交互に描き、やがて2人の運命が交錯するストーリーとなっています。

物語は、1906年4月16日、遠く離れたポーランドと、アメリカ合衆国に、2人の男の子が誕生しました。

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ヴワデグ・アベル。


ポーランドの山奥で生まれた私生児。

ポーランドの山奥で私生児として、貧困と劣悪な環境に生まれたヴワデグは、

貧しい罠猟師に拾われ、実の子同然に育てられます。

学校で優秀な成績を修めた彼は、やがてロスノフスキ男爵の子息レオン(実は腹違いの兄弟)の学友として、

男爵の城で教育を受けるようになります。

ケインとアベル(下巻)改版 (新潮文庫) [ ジェフリー・アーチャー ]


ウィリアム・ケイン。



銀行家のケイン家の長男として生まれる。

一方、アメリカに生まれたウィリアムは、銀行家の一族ケイン家の長男として生まれ、

彼の将来は、父の後を継ぐ銀行家として、素晴らしい一生を約束された子として、この世に生を受けます。

生まれた時から、上流私立校への入学を、予約されているような、上流界層の御曹司でした。

生誕地も境遇も、全く異なる2人でしたが、不思議な因果で接点を持つようになるのです。

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アメリカ移民となったアベル。



ソ連の強制収容所を経てアメリカへ。

ポーランドに生まれたヴワデグは、第一次世界大戦と、それに引き続いて起こったポーランド・ソ連戦争により、

育ての親の、ロスノフスキ男爵と親友のレオン、義姉フロレンティナ(初恋相手でもあった)を失います。

そして、彼自身も、ソ連の強制収容所に連行されますが、命からがら脱出に成功し、大西洋を越えて、アメリカ移民となります。

渡米後、ホテルのウェイターとして働きながら、彼の持前の頭の良さと、忍耐力で周囲の人々に認められ、

ホテルチェーン経営者の目に留まり、次第に頭角を現わし、遂に、ホテルグループの副支配人までに出世します。

そして、ヴワデグは、父の形見の腕輪に刻まれた「アベル・ロスノフスキ男爵」を、自ら名乗ったのです。

しかし、アメリカンドリームを手にした時、アベルにチャンスをくれた恩人が、

大恐慌で銀行からの融資を打ち切られ、株式市場の暴落で破産した事を苦に自殺します。

そして、ホテルを引き継いだアベル自身も、ホテルへの融資を拒否した、銀行の担当者ウィリアム・ケインに対し、

復讐を遂げることを、固く心に誓ったのでした。

そして、祖国ポーランドの救済と、ウィリアムへ復讐を目的に、熾烈な戦いが始まるのでした。

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銀行家の道を進むケイン。



名門一族の御曹司。

一方、アメリカ・ボストンの銀行家の息子であるウィリアム・ケインは、名門校に通い生涯の友マシューと出会います。

そして、12歳の時、彼の父親がタイタニック号に乗り合わせていた事で、年若くして、カイン家の家長となります。

タイタニック号事故による、父親の死などで、家庭の不幸に見舞われつつも、次第に才覚を発揮し、

ハーバードを卒業後は、父の銀行で働きだし、

ウィリアム・ケインは、人生を自分の足で歩きだすようになり、アメリカでも有数の、銀行の頭取になるのでした。

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不倶戴天の敵。



対立する二人。

アベルは、ホテル事業を立て直し、力を持つようになると、苛烈な報復を、次々に実行し始めます。

やがてケインも、自分の行く手をことごとく阻むアベルを「不倶戴天の敵」と、認識するようになるのでした。

更に、アベルの娘とケインの息子が偶然出会い恋愛、駆け落ちしてしまったため、2人の対立は、更に深まっていく事になります。

そうして、2人の因果の全てが判明した結末には、大きなどんでん返しが、仕掛けられています。

運命のコイン(下) (新潮文庫) [ ジェフリー・アーチャー ]



20世紀の現代史を下敷きに。



大戦、世界恐慌、タイタニック。

このように、物語は、同時代を生きるアベルとケインの、2人の目線で、交互に物語が進んでいきます。

主な現代史に登場する出来事は、このようなものです。

1912年のタイタニック号の沈没、
1914年に始まった第一次世界大戦、
1929年のウォール街大暴落による世界恐慌、
1939年から6年間に及ぶ第二次世界大戦。

こうした20世紀の現代史を背景に、戦争や時の大統領選挙、自動車の発明などが上手く物語に組み込まれ、

時代性を上手に表した、物語となっているのです。

そして、アベルはホテル王に、ケインは銀行家として成功を納めるのですが、

2人は事あるごとに対立し、不倶戴天の敵となるのです。

ケインとアベルの2人の争いですが、彼ら二人が、人生で出会うのはたった数回だけです。

彼らの戦いは、ケインは自分のオフィスであり、

アベルはホテルの支配人室で行われ、ブレーンを交えた、頭脳戦が繰り広げられていくのです。

著者のジェフリー・アーチャーは、2人がお金や株式が戦いをするマーケットで、彼らを存分に戦わせ、

それ以外での出会いの場では、2人を人間らしさや優しさと言う、血肉の通った絆を持たせているのです。

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旧約聖書の『創世記』を彷彿させる。




「カインとアベル」

『ケインとアベル』は、旧約聖書の『創世記』に登場する兄弟の物語「カインとアベル」を、ベースにしていて、

ケインがアベルを殺害する事を暗示させますが、そんなことはありません。

事業に成功し、ようやく故郷のポーランドを訪ねたアベルは、母と再会しますが、

貧しさと飢えにより、母は失明していて、息子の顔を見分けることが出来ません。

せめて暖かい服と、食べ物を買うようにと、多額のお金を渡すアベルでしたが、そのお金を母はどう使ったのでしょう。

冷徹で合理的な銀行マンとして描かれるケインの素顔、そして最後のどんでん返しと、驚きの展開が待っています。

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続編『ロスノフスキ家の娘』

ジェフリー・アーチャーは、本書の続編として、主人公アベル・ロスノフスキの娘、フロレンティナを主人公に、

彼女がアメリカ大統領の座を目指す、長編『ロスノフスキ家の娘』(1982年)を執筆しています。

この中で、フロレンティナの幼少時から描かれる前半部は、

『ケインとアベル』の物語を、別視点からなぞる構成になっているのです。

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