日本に於ける企業の数は、おおよそ430万社で、そのうち、99.7%は中小企業です。
ビジネスの世界では、競争は避けて通ることは出来ません。
資源の限られた中小企業が、巨大な大企業と、正面から競い合うのは、無謀なのでしょうか。
そんな疑問に答える、中小企業が大企業に勝つのに、考える上で役立つのが「ランチェスターの法則」なのです。
ランチェスター戦略とは。
資源の乏しい中小企業が、大企業に勝てる戦略、それが、「ランチェスター戦略」なのです。
それは、戦力に勝る「強者」と、戦力の劣る「弱者」に分けて、
それぞれが、どのように戦えば、戦局を有利に運べるのかを、考えるための戦略論です。
その戦略は、「同じ武器なら、勝敗は兵力数で決まる」と言う前提を基にした「強者の戦略」と「弱者の戦略」に分けられます。
この理論は、もともと第一次世界大戦での、航空戦から生まれましたが、
現代では、実践的なマーケティング理論として、活用されています。
【新版】ランチェスター戦略 「弱者逆転」の法則 [ 福永雅文 ]
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フレデリック・W・ランチェスター
ランチェスターの法則は、
1914年に勃発した、第一次世界大戦をきっかけに、イギリスのフレデリック・W・ランチェスター氏が、
航空機による空中戦の損害状況を、研究し始めたことから生まれました。
そこで述べられているのは「同じ武器なら、勝敗は兵力数で決まる」という事が前提です。
これを基に、アメリカのコロンビア大学数学教授である、バーナード・クープマンらによって、軍事戦略モデルとして改良されました。
それが、戦後になり、ビジネスの世界で「販売戦略」として展開され、
その後、高度成長期以降には、実践的なマーケティング理論として活用されています。
小山昇の“実践”ランチェスター戦略 成果を確実に出し続ける科学的な方法 [ 小山昇 ]
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「弱者の戦略」と「強者の戦略」
ランチェスターの法則は「弱者の戦略」と呼ばれる第一法則と、「強者の戦略」と呼ばれる第二法則に分けられています。
第一法則は伝統的な、一騎打ちを前提としたものです。
例えば、同じ武器を持つA軍5名とB軍3名が戦った場合、最終的にA軍とB軍の損害は同じで、A軍が2名残って勝ちます。
数に劣るB軍が負けていながら、なぜこれが弱者の戦略と呼ばれるのかは、このあと説明します。
一方、第二法則は一騎打ちではなく、近代兵器による遠隔戦や、
より広範な戦いを想定したもので、その場合は攻撃力は、兵力の2乗になると言うものです。
先の例で言えば、A軍5名とB軍3名が戦った場合、A軍の戦力は5^2(25)、B軍の戦力は3^2(9)。5^2-3^2=4^2となります。
即ち、第二法則に基づいてA軍とB軍が戦うと、A軍はなんと4名も生き残ることになるのです。
したがって、数に勝るA軍は、第一法則にあるような一騎打ち・近接戦を避け、
第二法則にあるような広範戦・遠隔戦をしたほうが、損害が少なくて済むということになります。
それが、第二法則が「強者の戦略」と呼ばれる理由です。
一方で、弱者は第二法則の事態に陥らないよう、なるべく近接戦を行うべきと言うのが、第一法則が「弱者の戦略」と呼ばれる所以です。
いずれの法則にも共通しているのは、「同じ武器なら、勝敗は兵力数で決まる」と言うことです。
小さな会社・no.1のルール ランチェスター経営1位作りの成功戦略 [ 佐藤元相 ]
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強者は「マーケットシェアが1位の企業」
では、数で劣る中小企業は、大企業には絶対に勝てないのか、と言うと決してそうではありません。
強者と言うのが、必ずしも大企業という訳ではない、と言うのがランチェスター戦略のポイントだからです。
ランチェスターは強者を「マーケットシェアが1位の企業」と定義しています。そこで生まれてきたのが、次の3つの戦略です。
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《No.1(ナンバーワン)戦略》
1つ目は、どんな市場でもいいので「シェアナンバーワンを目指すこと」です。
売上ナンバーワンの大企業でも、すべての市場で全勝というのは難しいものです。
市場を細分化し、自分が1位になれる地域や領域、ターゲット、商品で戦いを挑むのです。
細かくすればするほど、中小企業でも、勝てる可能性が高まるのです。
ランチェスター戦略では、No.1(ナンバーワン)になること。
しかも2位を圧倒的に引き離した1位で、それ以下は、2位であっても弱者という考え方です。
その際のNo.1は総合力ではなくて、ある市場に於いての、1位となります。
それについての明確な定義は、「2社間競合、単品の客内シェアであれば1位と2位との間に3倍の差」
「それ以外は、約1.7倍の差を2位に対して付けた1位」としています。
まんがで身につくランチェスター戦略 (Business ComicSeries) [ 名和田竜 ]
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ピーター・F・ドラッカーが再生させた企業
この理論を使って企業を再生させたのが、ピーター・F・ドラッカーです。
ドラッカーが手掛けた企業として良く知られているのが、
ゼネラルエレクトリック(GE)からのコンサルタントを受けた時のことです。
ドラッカーは、経営陣に対して、
「世界で一位か、二位になるつもりの事業だけを残して、その他はやめなさい」と助言したそうです。
その当時のGEは、世界的な企業で、家電から原子力まで、幅広く事業展開していましたが、
あまりに巨大な企業になり過ぎた事で、自社の方向性が分からなくなっていて、業績も悪化の一途を辿っていたのです。
それで、自社の強みのある事業に特化したことで、V字回復をさせた事は、あまりにも有名な話です。
マネジメント 基本と原則 [ ピーター・ファーディナンド・ドラッカー ]
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《1点集中主義》
1点集中主義は、攻撃目標を1つに絞り、達成するまで集中して攻撃し続けるという考え方です。
例えば、勝ち目のある商品、地域、流通、顧客を設定して、そこに経営資源を集中して投入します。
要素を分散させずに、集中させて競合相手から、負けない状況をつくり出すのです。
しかし、1つの市場に継続して集中する状況は、非現実的と言えます。
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら (新潮文庫) [ 岩崎 夏海 ]
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《足下(そっか)の敵攻撃の原則》
自分より弱い相手を潰す。
足下(そっか)の敵攻撃の原則とは、市場シェアで成果を出したい場合、
自社の1ランク下の競合他社(足元の敵)を攻撃(売上を奪う)すると言う考え方です。
理由は、自社よりも強い敵と戦って体力を失うよりも、勝ちやすい敵と戦った方が、勝ち目があるからです。
1ランク下の敵を倒せば自社は伸び、敵は下がるため差は倍もつくのです。
このような3つの戦略を使いながら、「弱者」が「強者」に勝つために、自分の得意分野に特化し、
少ない経営資源を、有効的に投下した戦略こそが、厳しい状況でも、生き延びる秘訣なのでしょう。
まんがでわかるランチェスター戦略(1) 超入門 [ 矢野新一 ]
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