村上春樹さんが最も影響を受けた作家は、『華麗なるギャツビー』の著者・スコット・フィッツジェラルドだそうです。
『ノルウェイの森』の中にも、スコット・フィッツジェラルドの作品『グレート・ギャツビー』が登場しています。
また、題名の『ノルウェイの森』から、村上春樹さんは、The Beatlesファンかと思いきや、そうでは無いようなのです。
村上春樹さんの『ノルウェイの森』。
口語的な表現とリズム感の文体。
『ノルウェイの森』では、村上春樹さんの、他の作品に見られるような複雑さ、難解さはなく、
一貫してリアリズムの書体で書かれていることから、
村上春樹さん作品の入門書として、位置付けられることが多いと言われています。
また、1987年『ノルウェイの森』がベストセラーになった時に、
若い女性に人気の流行作家として、脚光を浴びて、その作品は恋愛小説と評する意見もありましたが、
作品の背景や心理描写は奥深く、多層的な読み方が出来きます。
その文体は、なるべく口語的な表現を使い、文のリズム感を大事にして、
そのため、誰が読んでも馴染みやすく、感情移入しやすい構成になっているのです。
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『ノルウェイの森』あらすじ。
物語は37才の主人公が、ドイツのハンブルグ空港に、間もなく到着するシーンから始まります。
飛行機の中で、かかっていたのが、ビートルズの『ノルウェイの森』だったのです。
その時、18年前の1969年の大学時代に、何度も訪問したあの森を思い出します。
すると主人公は、頭がはりさけそうになり、両手で顔を覆い、そのままじっとしていると、
ドイツ人のスチュワーデスがやってきて、気分が悪いのかと英語で訊いたのです。
「大丈夫です、ありがとう」と言うと、スチュワーデスはにっこりと笑って行ってしまい、
音楽はビリー・ジョエルの曲に変わりました。
『森』が遠い昔の大学生の頃の 心象風景のようなのです。
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主人公のワタナベは、高校時代に親友・キザキを自殺で喪います。
当時キザキには、直子という恋人がいて、三人で遊ぶような良い関係でした。
ワタナベは、高校を卒業すると東京の大学に進学します。そこで、偶然キズキの恋人だった直子と再会したのです。
キザキの死により、疎遠となったワタナベと直子は、大学生になって再会したことで、恋愛関係が生まれました。
少しずつ距離を縮めているかに見えた二人の関係ですが、
ワタナベの想いが深まるほど、直子の喪失感は大きくなってゆき、直子は突如、ワタナベの前から姿を消したのです。
情緒不安定な直子は、心身のバランスを崩し、大学を休学して施設に入ってしまうのでした。
一方、ワタナベは同じ大学に通う、小動物のように瑞々しい女の子・緑と言う女性と仲を深めていきます。
明るく天真爛漫で、強烈な個性を持つ緑には、控えめで影のある直子とは、全く違った魅力を持っていました。
施設に入った直子に対し、回復を待つと約束していたワタナベは、緑に惹かれている自分に戸惑います。
二人の間で揺れ動く姿…、若さ故の、未熟な優しさや正義感、…、
そして、最後に直子はどうするのか、一方で、ワタナベの選んだ答えとは何だったのでしょうか。
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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド新装版 [ 村上春樹 ]
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The Beatlesとの関係性。
村上春樹さんの小説には、多くのThe Beatlesの曲が出て来ます。
更に、作品のタイトルになっているものもあるのですが、
村上春樹さんは、昔からThe Beatlesの、熱心なファンではないようで、むしろビーチボーイズ派だったようです。
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『ノルウェイの森』意味。
この本は当初、「雨の中の庭」というタイトルで、書き始められました。
このタイトルはドビュッシーのピアノ曲集『版画』の中の一曲「雨の庭」(Jardins sous la pluie)に由来したのです。
しかし、タイトルは原稿を版元に渡す2日前に変更されました。
題名に迷った村上さんが奥さまに作品を読んで貰い意見を求めると、
「ノルウェイの森でいいんじゃない?」という返答があったと言うのです。
ビートルズの曲の題を、そのまま本の題にするということで、ご本人は、当初、気が進まなかったと言いますが、
周りの「題はもう『ノルウェイの森』しかない」という意見が大勢だったため、今のタイトルとなったようです。
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【関連】
村上春樹さん『ノルウェイの森』タイトル由来の記述シーン
『Norwegian wood 』
The Beatlesの曲の方も原題は『Norwegian wood 』、これは日本語で『ノルウェイの森』と、訳されていますが、
厳密にいえば「ノルウェイ産の材木」、「ノルウェイ製の家具」と言う、日本語訳になります。
そして、『ノルウェイの森』は、ビートルズ 6枚目のスタジオアルバム「Rubber Soul」(1965年) に収録されている曲です。
この曲は、主にジョン・レノンによって書かれた楽曲で、一部ポール・マッカートニーによって書かれています。
リード・ボーカルおよびアコースティック・ギターはレノン、バッキング・ボーカルは、マッカートニーが担当しました。
歌詞の内容は「出会ったばかりの女の子の部屋に、下心を持って上がり込んだものの、成果を得られなかった」という下世話なストーリーです。
肝心の 「ノルウェイの木材」は、彼女の部屋に登場します。
それが床やドアなのか、家具なのか、それとも暖炉の木なのかは、最後まではっきりしません。
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『ノルウェイの森』に出てくるThe Beatles。
『ノルウェイの森』に出て来るThe Beatlesの曲は、冒頭からラストのシーンまで何回も出てきます。まずは冒頭部分の一節。
「飛行機が着地を完了すると禁煙のサインが消え、天井のスピーカーから小さな音でBGMが流れはじめた。
それはどこかのオーケストラが甘く演奏するビートルズの『ノルウェイの森』だった。
そしてそのメロディーはいつものように僕を混乱させた。
いや、いつもとは比べものにならないくらい激しく僕を混乱させ揺り動かした。」
「タイトル」になっているだけあって、曲の感じが凄く小説に合っています。
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「ドライブ・マイ・カー」(女のいない男たち)
村上春樹さん原作の映画「ドライブ・マイ・カー」が、海外で高い評価を得ています。
「ドライブ・マイ・カー」は、村上春樹さんの短編集『女のいない男たち』の中に編纂されています。
こちらからどうぞ↓
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【おすすめ】
川村元気『四月になれば彼女は』とサイモン&ガーファンクルの関係性。
『ノルウェイの森』に出て来るビートルズ。
その他、小説にでてくる楽曲。
『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド』
これは、直子の誕生日にワタナベと直子が二人で聞くアルバム。
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『ミシェル』『ノーホウェア・マン』『ジュリア』
レイコさんが直子のリクエストに応えて弾く定番3曲。
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『ヒア・カムズ・ザ・サン』
直子とレイコさんとワタナベが、散歩した先のコーヒーハウスで働く女の子が、レイコさんにリクエストした曲。
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『イエスタデイ』『フール・オン・ザ・ヒル』
直子を思いながら、ワタナベの家でレイコさんが弾いた曲。
A HARD DAY’S NIGHT Sessions [ ザ・ビートルズ ]
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「村上春樹さんの『ノルウェイの森』ビートルズとの関係性。」への2件のフィードバック
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