ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2 続編の考察。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の、待望の続編が刊行されました。
前作は、80万部を超えるベストセラーとなり、大きな反響を呼び多くのメディアでも取り上げられていました。
また、課題図書にもなり、今後も多くの読者が見込まれる本となったのです。
前作では、日本人の母と、アイルランド人の父の間に生まれた、ブレンディみかこさんの息子さんは、
自分のアイデンティティが、日本なのか、イギリスなのかに悩みながら、思春期を迎えていたのです。
そしてある日、ブレイディみかこさんは、息子さんの部屋にある、机の上の国語のノートの、落書きが目が止まります。
そこには、青い色のペンで、ノートの端に、小さく体をすぼめて、息を潜めているような筆跡で、
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」と記されていたのでした。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2
その続編である、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2 』は、
前作同様、英国ブライトン在住のブレイディみかこさんと、その息子、そして、夫である「配偶者」の日常を描写した作品です。
配偶者の夫は、ロンドンの金融街シティにある、銀行に勤めていましたが、数年後にリストラされると、
子供の頃から、やりたいと思っていた、大型ダンプの運転手に転職した人物です。
13歳を迎えた、ブレンディみかこさんの息子さんは、
英国のブレグジット問題や、格差問題、多様性やジェンダー、政治など様々な環境の中で、翻弄されていた前作に比べ、
自分の力で、それらを乗り切る、たくましさを身に着けたように見えます。
続編では、それぞれのストーリーは関連しながらも独立していて、続編から読み始めても、十分楽しめる内容になっています。
そして、思春期を迎えた息子さんは、前作以上に、感受性豊かに成長しています。
学校で色々な経験を積んだ息子さんは、家族との会話も、単なる日常の報告だけではなく、
家族同士で様々なことについて、意見交換しているのです。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2 [ ブレイディ みかこ ]
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ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2 』は、巻頭で、
人間の本質について わたしが本当に知っているたった一つのことは、それは変わることである。 ― オスカー・ワイルド
ライフって、そんなものでしょ。 ― うちの息子
と、記されていました。前作でも著者は、オスカー・ワイルドの言葉を引用していて、それは、こんな名言でした。
「老人はすべてを信じる。中年はすべてを疑う。若者はすべてを知っている。」
【目次】
1.うしろめたさのリサイクル学
2.A Change is Gonna Come ――変化はやってくる――
3.ノンバイナリーって何のこと?
4.授けられ、委ねられたもの
5.ここだけじゃない世界
6.再び、母ちゃんの国にて
7.グッド・ラックの季節
8.君たちは社会を信じられるか
9.「大選挙」の冬がやってきた
10.ゆくディケイド、くるディケイド
11.ネバーエンディング・ストーリー
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー (新潮文庫) [ ブレイディ みかこ ]
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「1.うしろめたさのリサイクル学」の考察
ブレンディみかこさんのお宅には、一度買ったものを捨てられないタイプの人間(夫)がいて、
それを解消するために、壮大な不用品の一掃を始めたのです。
夫は「DIYをするする詐欺の常習者」で、日曜大工用品店がバーゲンをやっていると、
バスタブだの、フロアリングの床材だのを買って来て、何十年も放置する癖があったのです。
それらを処分するために、レンタルのコンテナを借りて、その中に不用品を入れて満杯になると、
処分業者に引き渡すシステムが、イギリスにはあるそうです。
そのコンテナの中に、夫が不用品を入れて何日が経ったある日、
その中から、鉄がついているゴミを集めている、ルーマニア移民の家族と出会います。
彼らはほとんど、英語が話せませんでした。そんな光景を見た息子さんは、「鉄のごみなんて持っていってどうするの?」
他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ [ ブレイディ みかこ ]
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『ベネフィッツ・ストリート』
それは2014年放映された番組で、住民のほとんどが生活保護受給者と言う、実存のストリートで撮影された、密着取材のドキュメンタリーでした。
その番組では、粗大ごみを持って帰る、ルーマニア移民の家族に、
その街の貧しい人々が、ひどい言葉を浴びせたり、持ち帰る作業を、妨害するシーンがあったのです。
夫は、貧乏なアイルランド移民家庭の出身でした。
ルーマニア移民の家族では、奥さんが妊婦で近々、出産するようでした。
そんな彼らの心情にうたれた夫は、息子さんの幼少期の洋服類なども、不用品として出したのです。
女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち (幻冬舎新書) [ ブレイディ みかこ ]
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自分のごみを誰かにあげようとしている
ブレンディみかこさんは、息子さんに、「いらない服はこれに入れて」と、黒いビニールのゴミ袋を渡しました。
半分膨れたビニール袋の傍らで、息子さんが黙って座っているので、声をかけます。
「僕は自分のごみを誰かにあげようとしているのかなって……」
「ほんとうに誰かに何かをあげたいなら、新品をあげるべきだよね」
「あげる」と言うことと「リサイクルする」と言うことを、悩みだす息子さんなのでした。
そして、「あげる」「もらう」となると、ちょっとセンチメンタルなものが、くっついて来るよねと言ったのです。
その感覚は、「うしろめたさ」と言う、感情的な居心地の悪さのようでした。そう感じていた息子さんは、中学2年生になっていました。
そして、それらの洋服類を、ルーマニア移民の家族に渡してから数日後、近所から文句が出たのです。
それは、彼らが毎日のように、ブレンディみかこさんのお宅に来ているからだとし、
近所の家でも、庭の置いてあるものが無くなったと言うことから、彼らを来させるのをやめさせてくれと言うものでした。
更に、息子さんも、近所に住む少女から、文句を言われたのでした。
そこで、夫が注意すると、彼らは二度と来なくなったのです。
それから、しばらく経ったある日、ルーマニア人の青年がやって来て、応対に出た息子さんに袋を渡しました。
「ベビー服はいりません」「どうして?」「ベビーは生まれた。でも死んでしまいました」
何とも切なくやるせなくなる事態でした。
そして、息子さんは言ったのです。「リサイクリングが逆流して戻ってきちゃたね」
ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち [ ブレイディ みかこ ]
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ブレンディみかこさんが言いたかったこと
この本で、ブレンディみかこさんは多くの大事な事を、私たちに提示し、考えさせて呉れます。
貧しい人とは、どう接すればよいのか、上から目線で接しているのではないのか。
そもそも、貧しい、裕福と言う不条理を、どう捉えるのか?
「あげる」側は、「もらう」側に、どんな配慮をしなけらばならないのか。
日々変わりゆく社会の中で、どうすれば良いんだろうと、思い悩むような問題は山ほどあります。
そんな中でも、私たちは日々の生活に追われながらも、自分の立ち位置をしっかり持とうと、思わせて呉れるものでした。
それらの、切ないような、心温まるような考えさせられる話に、目から鱗が落ちるような内容でした。
そして、「ライフってそんなもんでしょ。後悔する日もあったり、後悔しない日もあったり、その繰り返しが続いていくことじゃないの?」と、
息子さんが最後に話す言葉がとても印象的でした。
この本は、ブレンディみかこさん一家の、親子の物語を越えて、
多くの人々に感じ取って貰いたい、大切なことが一杯詰まっています。
それぞれのエピソードは、ヘヴィーなテーマも多いのですが、それを感じさせないブレンディみかこさんの語り口が魅力的です。
変化の激しい社会を柔軟に生き抜くための、エッセンスが詰まっていて、今こそ、手に取って見たい一冊です。
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2 [ ブレイディ みかこ ]
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