大雪で閉鎖になったシカゴの空港で、一晩足止めをくらい、
偶然出会った老人の問いかけに、動揺してしまったのは35歳の「私」でした。
日々の仕事に行き詰まりを感じ、未来に期待感をもてない「私」に、その老人は、一晩だけの講義を始めたのです。
この本は、日々の仕事に追われる中で、日常をどう生き、考えることで、どのように自分の所属する組織で仕事をしていくのか、
または、新しいビジネスを見つけ出すのかを、実践出来るヒントが書かれているビジネス書です。
ビジネス書と言っても、この本はストーリー形式になっているので、
堅苦しい文章が続いたり、作者の自慢話しが、始まったりすることありません。
著者・デイル・ドーテン
この本の著者・デイル・ドーテンは、1950年生まれ。
アリゾナ州立大学大学院(経済学)卒業後、スタンフォード大学大学院で学びました。
1980年、マーケティング・リサーチ専門会社、リサーチ・リソーセスを起業し、
マクドナルド、3M、P&G、コダックなど、大手優良企業を顧客に持つ、全米でもトップ・レベルの会社にまで成長させます。
1991年、新聞に執筆したコラムが好評を博し、執筆活動を開始。現在アメリカを代表する人気コラムニストです。
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『仕事は楽しいかね?』要約
ある夜のこと。シカゴから飛行機で帰宅しようとしていた、1人のサラリーマンがいました。
しかし、その日は吹雪で、天候は大荒れでした。
どうしても、飛行機が飛び立てないと言う事で、今宵は、空港内で一夜を過ごさなければならなくなってしまったのです。
「なんて最悪な日だ…」、と空港内に座り込み、一人静かにムスッとしていると…
元気な子どもたちと遊びはしゃぐ、恰幅の良さそうな、陽気な老人と出会います。
不思議な老人との出会い。
しかし、子どもに振り回されて息を切らせた老人は、なぜか「私」のところに近づいて来ました。
「やあ、こんにちは」
今日はなんてついてない日なんだ…飛行機が止まる上に、
こんな変な老人に巻き込まれるなんて…などと、心の中で思っている、「私」のことなどお構いなく、
老人は持ち前の陽気さで、「私」との会話を、勝手に始めます。
面識もない、接点もない、その老人は隣に座り、くだらないジョークを飛ばしたかと思えば、
「私」に、たくさん質問を投げかけて来ました。
「私」は言われるままに答え続けましたが、
その質問の中で、今の「私」の心が揺れる、ドキッとする質問があったのです。それは、、
「仕事は楽しいかね?」
この質問をされた時、なぜだか「私」は、これまで溜めて来た、
苦しくて抜け出せない思いを、一気に、吐き出したくなったのです。
今日初めて会った、どこの誰ともわからない老人にです。
そして、そのまま心の奥底に秘めていた思いを、打ち明け始めたのでした。
老人は「うんうん」と黙って話を聞き続けて呉れましたが、やがて用事が出来たのか、「私」の元を去って行ったのです。
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不思議な老人の正体とは?
何故、あの老人に身の上を話してしまったのだろう…そう考えていたところに、1人の女性がやって来て、
「あなた、あの方のお知り合い?」と話しかけてきました。その人は、あか抜けた雰囲気のある、都会の女性でした。
「いや…」と答えると、
「まぁ残念!」と返されたのです。
なぜ残念なのだろう…と「私」が思っていると、その女性は、あの老人の正体について、教えて呉れたのです。
あの変わり者の老人は、有名な発明家、起業家とし、て巨万の富を築いた人物で、億万長者の1人だと言うのです。
様々な企業家や政治家が、お金を払ってでもアドバイスを求める、高名な実業家だったのです。
「私」はその瞬間「しまった!」と、心の中で思いました。あの時、もっと成功の法則でも聞いていたら自分も…と!…
しかし、そんなことを悔やんでいたところ、何と、またあの老人が戻って来たのです。
しかも、私の身の上を聞き、状況を察して呉れたのか、「成功の原則」と言うべきものを、話し始めて呉れたのでした。
こうして、ふたりは妙な巡り合いから、お互いの仕事に対する思いを語り合います。
「私」は企業で働く者としての、現実や疑問を老に投げかけます。
それに対して老人は、成功した実業家として、それを聞き、アドバイスをしていくのでした。
この本の中には、仕事に関する多くの名言が、散りばめられています。
今の仕事に自信が持てない、なんのために仕事をしているのかと迷ったり、
将来の自分の姿が見えないなど、多くの不安を抱えるビジネスパーソンに、
老人は、『仕事は楽しいかね?』と、語り掛けるのです。
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『仕事は楽しいかね?』の名言。
“「不思議なことに、不運は得てして好運に変わり、好運は得てして不運に変わる。好運も不運も、私はあまり信じなくなっている。あるのはだた、巡り合わせだけだ。」”
この言葉は、「ピンチはチャンス」に、通じるものがあるように見えます。ピンチの状態に陥り、苦境に立たされた時に、
それを好機と捉え、努力することで、チャンスの女神が微笑む事があります。
また、好機が続くと有頂天になり、自分を見失くなることで、ピンチは足元に、近づいて来ることだってあるのです。
しかし老人は、それは巡り合わせだと語るのでした。
“「人々は、したくもない仕事をし、同時にそれを失うことを恐れているんだ」”
“「人生は進化だ。そして進化の素晴らしいところは、最終的にどこに行き着くか、まったくわからないところなんだ」
きみは、最初に陸にあがった魚は、長期にわたる目標を持っていたと思うかね?”
多くの自己啓発本には、目標を持つことが大切と書かれています。人生に於いて「目標」を持つことは、終着点を見通して、
自分のなりたい将来像に、近づきやすいのではないかと思いますが、
老人は最初から、最終地を見通せる訳ではない。何故なら、人生は進化していると語っているのす。
“「僕はたった一つしか目標を持っていない。毎日毎日、違う自分になること。これは”試すこと”を続けなければならないということだ」”
物語の中で、「私」は、他の成功した人々を、真似るべきであると主張します。
わざわざ失敗の可能性を、自ら踏みに行く必要はない、
成功している人を真似ることで、より効率的に、成功を引き寄せることが出来ると主張します。
それに対して、老人はこう言います。
“成功するというのはね、右に倣(なら)えをしないっていうことなんだ。
こう表現しておこう。ピカソの絵の写真を切り抜いてコピー機にかけても、ピカソにはなれない、とね。”
試してみることに失敗はない。
そして、老人はこう言ったのです。
“「試してみることに失敗はない」”
ビル・ゲイツのような事業家から、スポーツ選手、演奏家など、
様々な成功した人たちの話を出しながら、とにかく、「試してみることに失敗はない」と訴えます。
とにかく「試してみること」この第一歩を踏み出さなければ、現状は変わらないし、将来の展望も見えて来ません。
しかし、人は「試してみること」に躊躇します。
失敗したらどうしよう? 恥ずかしい、今さらこの歳でそんな面倒くさいことしなくても、
そうして、自分自身が掴んだかもしれない、輝かしい将来を奪っているのです。
だから老人は、「試してみることに失敗はない」と訴えているのです。新しい扉を開くのは自分自身です。
誰も、新しい扉を開いては呉れません。勇気を持つか否かは、自分自身に掛かっているのですから。
コインの表を出す確率
そして物語は、「試し続けるならチャンスは訪れる」ことを、頭にたたき込んでおいて欲しいと訴えています。
何度となく〝表〟を出すコインの投げ手は、何度となく投げているのだということを。
そして、チャンスの数が十分にあれば、チャンスはきみの友人になるのだということを。
失敗する確率が9/10から8/10になるには。
「僕のアドバイスに従って、 模倣の代わりに革新を心がけ、昨日と違う自分になろうと日々努力するなら、
きみは可能性を高めることができる。 もう、十回中九回も失敗するなんてことはない……」
「きっと、十回中八回で済むよ」
失敗の確立を下げる事が出来れば、それだけ成功へのプロセスが進むことで、それは、モチベーションアップにも繋がり、
より現実味を帯びて来ることとなるでしょう。
誰しも、物事を始めて、初回で成功するなんて、あり得ないからです。
“「新しいアイデアというのは、新しい場所に置かれた古いアイデアなんだ」”
この言葉は、「温故知新」に通じるものがあります。前代未聞の画期的なアイデアは、そう簡単に生まれません。
でも、過去のアイデアに改良すべきものがあるとしたら、古いアイデアは、ビジネスチャンスの宝庫なのかもしれません。
それを見極めるには、「試してみること」であって、
「試してみることに失敗はない」のです。
まんがで変わる仕事は楽しいかね?/デイル・ドーテン/「仕事は楽しいかね?」研究会/藤森ゆゆ缶
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