相棒Season20第5話「光射す」右京50-80問題を考える。




相棒Season20第5話「光射す」杉下右京50-80問題を考える。

組織対策5課の角田課長(山西惇さん)は、街中で太田署の水木洋輔(伊藤洋三郎さん)と言う顔見知りの元刑事が、落ち込んでいる姿を見掛けます。

水木は、2か月前から音信不通で、行方不明になっている大学生の娘を探すため、

警察官でありながら、ネットで情報提供を呼び掛け、問題になった人物でした。

しかし、寄せられた情報は冷やかしばかりで、本人は騒動の責任を取って辞職していたのです。

そんな状況を水木は「光が見えない」と言っていて、

それを聞いた角田課長は「真っ暗で、出口が見えない状況何だろうね」と、右京さんに話していました。

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警備員の男の“密室殺人”。


そんな中、35歳の羽田空港の警備員の男・紅林啓一郎(西野太盛さん)が、施錠された古いアパートの自室で、首を吊って死んでいるのが発見されます。

状況的には自殺でしたが、遺体には何者かに殴打されたような、

生々しい傷が残っていて、単なる自殺とは思えなかったのでした。

しかも、室内の指紋が不自然に拭き取られ、更に玄関や窓は、内側から施錠されていたため、

もし他殺ならば“密室殺人”も疑われたのです。

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薄い壁を隔てた隣人は何を思う。


そして、この事件の一部始終を見ていたのは、何と、被害者が飼っていた一匹の“亀”だったのです。

紅林の部屋は窓には、目張りがされていていました。

それは彼の趣味がオーディオで防音のために、そんな事をしているようでした。

事件に興味を持った右京さんと冠城亘が聞き込みをすると、

アパートの壁が薄いのか、隣室から咳きこむ声が聞こえることに気づきます。

「薄い壁を隔てた隣人は、一体何を思ったでしょう。」と、右京さんは呟きます。

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社会問題!50-80問題。


隣室には80歳の女性・三宅富士子(草村礼子さん)が、50歳になる息子の卓司(矢崎まなぶさん)と住んでおり、

引きこもりで、部屋から出てこない息子のため、三宅富士子は今なお、働き詰めの日々を送っているようでした。

いま社会問題になっている、50-80問題の家庭だったのです。

三宅富士子は、被害者の紅林とは、生活時間帯が逆なため、顔を合わせたこともないと話します。

日中、部屋にいる三宅富士子の息子の卓司が、何か聞いている可能性もありますが、話を聞くことさえできない状況でした。

卓司は暗い自分の部屋で、一日中、パソコンとにらめっこのような生活をしていおり、家から外に出ることはありませんでした。

翌日、捜査を続けていた右京さんと冠城亘は、現場付近で怪しげな男を発見します。捕まえて事情を聞くと、

その男は、水木の元部下の刑事で、警備員の紅林が亡くなった部屋を、水木洋輔と一緒に、非公式に家宅捜索していたと語ったのでした。

そんな無茶をしたのは、問題の部屋に女性が監禁されていると言う、ネットの書き込みがあったからだと言うことが分かって来ました。

このネット情報を頼りに、所轄署の刑事だった水木洋輔(伊藤洋三郎さん)が、

一週間前、紅林の部屋を独断で家宅捜索していたのです。

2カ月前に失踪した娘・沙也加(近藤くれはさん)を探していた水木が、インターネット上で、娘が紅林の部屋に監禁されているという書き込みを発見し、

強引にも強硬突破で、紅林の部屋に乗り込んだのですが、そこで自分の娘を発見することは出来ませんでした。

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引きこもりの男がやったこと。


そして、ネットに監禁の情報を載せたのは、卓司だったのです。

卓司にとって、隣の部屋で行われている犯罪を知らせる手段は、ネットへの投稿だったのかもしれません。

当初は密室殺人と思われていた事件でしたが、

以前、紅林と付き合っていた同僚の女性が、紅林と別れ、渡されていた部屋の合鍵を返そうと、紅林のアパートを尋ねましたが、

紅林は不在で、ドアに付いているポストも、ガムテープで塞がれていたため、窓の桟(さん)に置いて、立ち去っていたのでした。

三宅富士子は町工場で働いていました。

その工場で彼女は最古参でした。50になる息子が引きこもりなため、一家の家計を支えていたのです。

右京さんは紅林の部屋で、「おや? これカーペットでしょね…」と、敷いてあったカーペットを剥がすと、

本来の床が出て来て、そこに床下収納庫があったのです。

床下収納庫の蓋を冠城亘が開けると、そこに血痕があったのでした。そして、その血痕は、水木洋輔の娘のものだったのです。

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見守りカメラの目的は?


右京さんは紅林の部屋に置いてあった当初、亀を見守るための見守りカメラと思っていたのが、

亀ではなく、監禁した水木の娘を監視するために、置かれていたことに気付いたのでした。

三宅富士子は、隣の部屋の異変に気が付いていました。

それで合鍵を使って紅林の部屋に忍び込み、監禁されていた水木の娘を救い出そうとしたのです。

その背景にあったのは、三宅富士子が、水木洋輔と娘の関係が、

彼の妻が亡くなった後、悪くなっていたのを知り、それが原因で、娘の素行が悪くなったのではないかと思い。

自分と引きこもりの息子の関係にダブらせ、子供たちがそうなってしまうのは、

親の責任ではないかと思い悩んでいたからでした。そしてそのため、水木に同情を寄せていたのでした。

そんな三宅富士子の様子を、見守りカメラで監視していた紅林がそれに気づき、部屋に戻って来て、三宅富士子に襲い掛かりました。

それを阻止しようとして払いのけた時、彼は頭を殴打し気を失ってしまったのでした。

深夜の防犯カメラに、女性を背負って歩いている人物の姿が映っていたのです。

三宅富士子は80歳と言う老齢にむち打ち、娘を背負って救出したのでした。

気絶から目を覚ました紅林は、犯行が発覚してしまったため、もう逃げられないと覚悟し、自殺を図ったのでした。

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引きこもり男が外に出た。


事件が解決し、水木洋輔は証拠隠滅罪、三宅富士子は家宅侵入罪で、警察に連行される事になり、パトカーに乗せられた時、

三宅富士子の息子の卓司が、アパートの部屋から外に出て来たのです。

悲しい事件でしたが、母親が連行される事態となったことで、息子が外に出ることが出来たのです。

その様子を右京さんは温かい目で見ていました。

現代の50-80問題を象徴する事件でした。そして、悲しき闇に光を当てる作品でした。

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かつての“相棒”亀山薫を彷彿させた場面

ところで、亀の行く先はどうなったかと言うと、所有者不在となった亀を、右京さんが仲介し、

小料理屋「こてまり」の女将・小出茉梨(森口瑤子さん)が引き取る展開になりました。

右京さんが小出茉梨に亀の飼い方をレクチャーするシーンで、

小出茉梨が「それにしても詳しいですね。以前、亀を飼っていらしたことが?」と言うと、

右京は「それはそれは手の焼ける亀でしてねぇ……」とほほえんで、

かつての“相棒”亀山薫(寺脇康文さん)を懐かしむようなシーンがあったのです。

亀の世話をする小出茉莉を見ながら右京さんは、

「光が見えない…光が無いと生きられないのは人間も同じですね」と語りました。

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