2022年1月15日の朝日新聞に「今こそ!読みたいシャーロック・ホームズ」
~名探偵 尽きせぬ謎と発見~として、
朝日新聞社が調査した、コナン・ドイルの作品の、読者ランキングが掲載されました。
英国の作家コナン・ドイルは、1887年にシャーロック・ホームズを世に送り出しました。
それから、135年後の現在でも、ホームズは世界一有名な名探偵です。
そして、世界中にいるシャーロック・ホームズの、熱狂的な崇拝者は、
「シャーロッキアン」と呼ばれていて、日々ホームズの研究をしています。
ホームズと言うと、たいていの人は「ストランド・マガジン」の挿絵、鹿撃ち帽、
インバネスコート、パイプ、虫眼鏡と言ったアイテムを思い浮かべることでしょう。
そして、ホームズ=探偵と言うイメージを決定づけた小説です。
更に、ロンドンには、ホームズが住んでいたとされる「ベーカー街221B」があり、ホームズ博物館なっているのです。
読者モニターによる、ランキングはこのようになっていました。
第1位 「まだらの紐」
子ども時代に読んだ時の恐怖心が、大人になった今でも思い出される、と言う読者意見が少なくないようです。
1883年4月のある早朝に、ホームズとワトソンが暮らす、ベイカー街221Bの部屋に、
全身黒ずくめの、ベールを被った女が押しかけて来ます。
その女は、サリー州ストーク・モーランの屋敷に、義父と二人で暮らし、
結婚を間近に控えた、32歳のヘレン・ストーナー嬢でした。
彼女は、人里離れた屋敷での暮らしと、義父の性質、双子の姉ジュリアが亡くなった日の事を、ホームズとワトスンに話します。
それは2年前、姉のジュリアは、現在のヘレンと同様、結婚を控えていましたが、
就寝中に悲鳴を上げた後、「まだらの紐」と言う、不可解な言葉を遺して、亡くなってしまったのです。
検死やその後の調査でも、特に怪しい点は見つからず、死因もはっきりしないまま、月日が経ってしまいました。
しかし、その時の、姉の異常な様子や姉の遺した言葉を、ヘレンは忘れることが出来ないでいたのです。
ヘレンは寝室の改修工事のため、姉が使っていた寝室を急遽あてがわれます。
すると、就寝中、生前の姉が口にしていた「口笛のような音」を耳にします。
彼女は自分自身も、姉のジュリアのようなことに、なるのではという不安にかられ、
すがるような思いで、ベイカー街に助けを求めに来たのでした。
名探偵シャーロック・ホームズ 赤毛連盟 まだらのひも (角川つばさ文庫) [ コナン・ドイル ]
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第2位 「バスカヴィル家の犬」
バスカヴィル家の当主、チャールズ卿が謎の死を遂げます。その死体の近くには、犬の足跡が残されていました。
主治医であるモーティマー医師は、バスカヴィル家に伝わる魔犬の関与を疑い、シャーロック・ホームズに調査を依頼します。
ホームズは、バスカヴィル家の財産を、相続する人物である、チャールズの甥ヘンリーと面会します。
アメリカから帰国したばかりのヘンリーは、靴二足の片方だけが無くなる、という災難に見舞われていました。
更にヘンリーは、脅迫めいた内容の手紙も受け取ります。
仕事があると言う事で、ホームズは調査に加わらず、相棒のワトソンを、バスカヴィル家のあるダートムアへと向かわせます。
ヘンリーと行動を共にする事となったワトソンは、
脱走した囚人の話、突然暇を申し出る執事、そして、執事の不審な行動を目の当たりにします。
その出来事の全てを手紙に綴り、シャーロック・ホームズの住むベイカー街221Bに送りますが、
その手紙は、謎の人物の手に渡ってしまうのでした。
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第3位 「赤髪連盟」
「赤髪連盟」は、赤毛の人だけを集めた、連盟が突如解散した謎を追う、
『シャーロック・ホームズの冒険』に、収録されている短編小説です。
ワトソンがベーカー街のアパートに立ち寄ると、ホームズは燃えるような赤い髪を持つジェイベズ・ウィルスンと面会中でした。
質屋で雇っている店員に勧められて、片手間に始めた赤髪連盟の仕事で、困ったことになっていると言うのでした。
赤髪連盟の仕事は、1日4時間、大英百科事典の写しをすると、週に4ポンドの報酬が支払われると言う、とても美味しい話でした。
ところが2ヵ月経った今、急に解散したと言う張り紙が出されたため、ウィルスンは途方に暮れていたのでした。
シャーロック・ホームズの冒険 (角川文庫) [ 石田 文子 ]
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第4位 「踊る人形」
シャーロック・ホームズのベーカー街221Bの元に、小さな人形が、ずらりと描かれた絵が送られて来ます。
送り主は、ノーフォーク州リドリング・ソープ在住の、ヒルトン・キュービットと言う荘園の主の紳士からで、
ホームズの元を訪れたヒルトンによると、
その落書きのような絵を見た、彼のアメリカ人の妻は、ひどく怯え、卒倒してしまったと言うことでした。
ホームズは、暗号を解くための情報を集めるため、依頼人に、踊る人形のメッセージを集めるよう指示しますが、
物語は予想もしない展開を見せていきます。
果たして踊る人形が伝えるメッセージとは?
作者コナン・ドイルが、好きな短編12編の中の、第3位に選んだと言う、暗号もの古典ミステリの代表作です。
踊る人形 シャーロック・ホームズ (<CD>) [ アーサー・コナン・ドイル ]
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ホームズの『緋色の研究』の探偵事務所は、ベーカー街221B。
第5位 「最後の事件」
コナン・ドイルの執筆した、短編56編、長編4編からなる、シャーロック・ホームズシリーズですが、
その長い歴史の中に、空白の期間がありました。
それは、作者のコナン・ドイルが、シャーロック・ホームズシリーズに終止符を打ち、
ホームズから、離れていた時期だったのです。
『最後の事件』(短編集『回想のシャーロックホームズ』収録)は、
コナン・ドイルがホームズシリーズを終わらせる事を、決意して書いた作品でした。
結婚して開業医となったワトソンは、ホームズと事件の捜査に乗り出すことも少なくなり、
新聞などで、親友のホームズの活躍を、目にするだけになっていました。
そんなある夜、ケガを負い、フラフラになったホームズが、診療所に転がり込んで来ます。
尾行や襲撃を警戒するホームズの様子から、ただならぬ事態を感じ取ったワトソンでした。
ホームズは「しばらく一緒に旅に出ないか」と提案し、その驚きの理由を話し始めます。
ホームズは水面下で、巨大な悪の一味を捕えるために動いていて、
あとは警察が作戦を、実行してくれるのを、待つばかりという状態になっていました。
しかし、その一味に、命を狙われることとなり、作戦が無事に遂行されるまで、ロンドンを離れることにしたのです。
ホームズが捕えようとしている一味の黒幕が、悪名高き天才、ジェームズ・モリアーティー教授でした。
その人物は、ホームズが「犯罪界のナポレオン」と呼ぶ、底知れぬ賢さと、カリスマ性を兼ね備えた人物です。
そして、最後にモリアーティ教授と滝に落ちたのでした。
シャーロック・ホームズとモリアーティー教授。2人の天才の直接対決が、事件の数年後に、ワトソン視点で語られているのです。
名探偵シャーロック・ホームズ ホームズ最後の事件!? (10歳までに読みたい名作ミステリー) [ コナン・ドイル ]
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『相棒』とシャーロックホームズ、エルキュールポアロの関係性
第6位 「四つの署名」
ある手紙を受け取ったメアリー・モースタンは、ホームズの元を訪ねます。
手紙の差出人はサディアス・ショルトーで、その内容は、面会を求めるものでした。
モースタン嬢はサディアスから、毎年大粒の真珠を受け取っていましたが、
その真意も分からず、面会を求める理由も、謎に包まれたままでした。
相談を受けたホームズは、ワトソンとモースタン嬢を連れて、サディアスと面会します。
サディアスは、モースタン嬢の父モースタン大尉と、サディアスの父ショルトー少佐が、インドで駐留していたこと、
ショルトー少佐が、財宝を独り占めして逃げたこと、モースタン大尉はショルトー少佐に殺されたこと、
そして、少佐が死ぬ前に「四つの署名」が入った紙が、屋敷から見つかった事などを話します。
ショルトー少佐の死後、息子であるサディアスは、モースタン嬢に真珠を贈って、償いをしていたのです。
手紙で面会を申し出たのは、少佐が隠していた財宝がみつかったためであり、
少佐は財宝をモースタン嬢に譲ると言う、遺言を残していました。
ホームズたちは、財宝がみつかった少佐の屋敷へ向かいます。そこで、サディアスの兄バーソロミューの死体を発見するのです。
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第7位 「ボヘミアの醜聞」
ワトソンは結婚し、開業医となっていて、ホームズとは疎遠になっていました。
往診でベイカー街を通り掛かったワトソンは、
無性にホームズに会いたくなり、訪ねてみます。それは1888年3月20日の事でした。
久しぶりにワトソンと会ったホームズは、一通の手紙をワトソンに見せ、
手紙はボヘミア製の紙に書かれており、差出人はドイツ人と推理したのです。
やがて、手紙の中に書いてあった「ある人物」と見られる男がホームズを訪ねて来ます。
大柄で高貴な身なりをした男は、黒いマスクで顔半分を隠していて、男は自らを「フォン・クラム伯爵」と名乗りますが、
ホームズは、彼がボヘミアの国王であることを見抜いたのです。
「ボヘミアの醜聞」には、こんな一場面があります。
ベーカー街221Bの部屋で、ホームズがワトソンに、この家の階段は何段あるのか、と尋ねるのですが、
ワトソンは答えられません。そこでホームズはこう言います。
「君は見ているけれど観察していない。観察することと見ることは、まったく別のことなんだよ」と語ったのでした。
[書籍のメール便同梱は2冊まで]/[オーディオブックCD] シャーロック・ホームズ「ボヘミアの醜聞」[本/雑誌] (CD) / アーサー・コナン・ドイル / 大久保ゆう
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第8位 「六つのナポレオン」
ある日のこと、ホームズとワトソンは、ナポレオンの胸像が破壊される事件の話を、レストレード警部から聞き知ります。
事件が起きたのは、数日前のハドソン商会でした。美術品を扱うこの店で、営業中にナポレオンの胸像が破壊されたのです。
更に、開業医の自宅にあった、2つのナポレオンの胸像も、破壊される事件が発生します。
壊されたナポレオンの胸像は、ハドソン商会から購入された品でした。
事件に興味を持ったホームズは、レストレード警部に、進展があったら報告するよう頼みます。
そして、さらなる胸像破壊事件が発生し、今度は、死体も発見される事態となりました。
名探偵ホームズ六つのナポレオン像 (講談社青い鳥文庫) [ アーサー.コナン・ドイル ]
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第9位 「美しき自転車乗り」
音楽の家庭教師として働くヴァイオレット・スミスは、自転車での帰宅途中に、
怪しい自転車の人物に、背後から後をつけられます。
不審人物が毎回現れることに、不安を感じたヴァイオレットは、その男の調査をシャーロック・ホームズに依頼します。
ヴァイオレットは自転車でストーカーされる前、
叔父が瀕死の状態になったことをきっかけに、叔父と親交のある、2人の男が現れたと話します。
一人はカラザズという男で、カラザズは自分の子供の家庭教師として、
世間相場以上の金額で、ヴァイオレットを家庭教師として雇ったのです。
もう一人のウッドリは、ヴァイオレットにむりやり結婚と、接吻を迫るような悪漢でした。
依頼を引き受けたホームズは、ワトスンと共に調査を進め、
ヴァイオレットが通る道の側にある屋敷に、ウィリアムスンと言う、怪しい牧師が住んでいることを突き止めます。
シャーロック・ホームズの冒険(上)新版 (ハヤカワ・ミステリ文庫) [ アーサー・コナン・ドイル ]
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第10位 「銀星号事件」
ホームズとワトソンは、グレゴリー警部に、ある事件の捜査を依頼されます。
その事件は、銀星号と言う常勝競走馬の失踪、および、銀星号の調教師だった男の変死でした。
銀星号が厩舎からいなくなった日、
厩舎から離れたくぼ地で、調教師ストレイカーが、頭に殴られたような傷を負って死んでいました。
厩舎は草原に囲まれており、馬はすぐに見つかると考えられていました。しかし、1週間たっても発見出来ませんでした。
ホームズは銀星号失踪時、厩舎の宿直だった青年と、メイドに話を聞きます。
調教師の死体発見現場、所持品を調べ、さらに群れなす馬の習性から、銀星号の行方を推理したのです。
名探偵ホームズ全集 第一巻 深夜の謎 恐怖の谷 怪盗の宝 まだらの紐 スパイ王者 銀星号事件 謎屋敷の怪 [ コナン・ドイル ]
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番外?「緋色の研究」
このランキングちょっと不可思議です。そうです!1887年に書かれた第1作の「緋色の研究」が、ランキングされていないのです。
シャーロック・ホームズの人物造形の、エッセンスが詰まった「緋色の研究」が何故、ランクインしていないのか?
ワトソンと始めてベーカー街221Bで出会い、
ワトソンがアフガニスタンで負傷し、帰還した軍医だと言い当てた、あのシーンの話しが入っていないのですから。
ビクトリア時代の英国の闇、貴族たちの醜聞、
植民地から持ち帰った怪しげな品、貧民窟やアヘン窟、ホームズの興味は尽きません。
始めて、シャーロック・ホームズシリーズを読まれる方は、先ずは「緋色の研究」から読むことをお勧めします。
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