俳聖松尾芭蕉の有名な代表作・奥の細道を含む俳句ベスト7選




知っておきたい有名な松尾芭蕉の代表作・奥の細道含む俳句7選

最近はテレビのバラエティー番組でも、俳句がメインで取り上げられて、芸能人でも才能ある人がいるようです。

そんな中で、辛口批評でおなじみの、俳人・夏井いつきさんは多くのメディアに登場し、俳句の面白さを伝えています。

また、2022年の養命酒のCMでも、俳句が登場していて、好感度で俳句の良さを、身近に感じる事が出来ます。



俳句の起源。



俳句は「五・七・五」と限られた短い文字の中に、

季語を込めた言葉を詰め込み、四季を感じ取る表現に、改めて日本文化の良さを感じます。

俳句の起源には所説あるようですが、一つは俳句の元となる形式が生まれたのが、室町から鎌倉時代だそうです。

これは、貴族の間で広まっていた、詩句を数人でリレーしながら詠み続けると言う、優美な遊びの「連歌」から始まっています。

もう一つの歴史は、俳句と言う呼び名が生まれたのが、明治時代だと言うことです。

連歌の上の句の部分だけを切り取ったものが、江戸時代に「俳諧」として広まり、

それを明治時代に、正岡子規が「俳句」と言う呼び名で、更に新しい文芸として発展させたのです。

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「俳聖」松尾芭蕉の凄さ!


そんな中から、今回は日本人なら知っておきたい、松尾芭蕉の名句を選出しました。

改めて芭蕉の俳句の偉大さを感じて見ましょう。

松尾芭蕉は、和歌の余興の言捨ての滑稽から始まり、滑稽や諧謔を主としていた俳諧を、

蕉風と呼ばれる芸術性の極めて高い句風として確立し、

後世では「俳聖」として世界的にも知られる、日本史上最高の俳諧師の一人です。

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松尾芭蕉の名句7選。


古池や 蛙(かわず)とびこむ 水の音

(季語 / 季節)蛙 /春


この句は、滋賀県大津市にある、真言宗醍醐派の岩間山正法寺(通称:岩間寺)で詠まれたとされています。

ここは、西国三十三所 第十二番のお寺でもあります。

俳諧集『庵桜(いおざくら)』には、芭蕉の句として「古池や 蛙飛ンだる 水の音」が収録されています。


夏草や つわものどもが 夢の跡

(季語 /季節)夏草 /夏


「つわもの」とは、とても強い武士たちのこと。

この句は、松尾芭蕉が平泉で5月13日(新暦6月29日)に詠んだ俳句です。

江戸を出発しておよそ1ヵ月半。平泉の高館(たかだち)に立ち、

夏草が生い茂る風景を目の当たりにして、奥州藤原氏の栄華の儚さを、芭蕉はどう思ったのでしょう。


五月雨を 集めてはやし 最上川

(季語 /季節)五月雨 / 夏


五月雨(さみだれ)とは、旧暦の5月頃に降る長雨のことを言い、山形県を流れ、

日本海へと続く最上川は、日本三大の暴れ川として知られ、古くからたびたび災害を繰り返して来たそうです。

そして、2022年8月にも残念なことに、多くの被害をもたらしました。


閑(しず)かさや 岩にしみ入る 蝉の声

(季語 /季節)蝉 / 夏


松尾芭蕉と言えば、この句を思い浮かべるんじゃないでしょうか。

夏のうだるような暑さの中で、一幅の清涼感をもたらして呉れます。

この句は、芭蕉が出羽国(でわのくに、現在の山形市)の、立石寺(りっしゃくじ)に参詣した時に詠んだもので、

『奥の細道』に収録されています。

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荒海や 佐渡に横たふ 天の川

(季語 / 季節)天の川 / 秋


現代語訳すると…

「暗く荒れ狂う日本海のむこうには佐渡島が見える。空を仰ぎ見ると、美しい天の川が佐渡の方へと大きく横たわっている。」

と言う意味。

この句は「新潟県出雲崎」で詠まれたもので、奥の細道を旅する途上に立ち寄った場所でした。

日本海沿いにある出雲崎では、海岸から佐渡島を遠望することができます。


秋深き 隣は何を する人ぞ

(季語 /季節)秋深き /秋


この句を詠んだ時、芭蕉は旅の途中でした。大阪の宿で体調を崩してしまいます。

季節の良い秋の日に、自身の身体が自由にならないもどかしさ、寂寥感が表れています。

この句を詠んでから、芭蕉は寝込んでしまい、2週間後に50歳で亡くなりました。

芭蕉は、『平家物語』で有名な木曽義仲の大ファンでした。「義仲の墓の隣に葬ってほしい」と遺言したほどで、

今も遺言どおり、琵琶湖のほとりの義仲寺に、芭蕉の墓が残されています。


旅に病(や)んで 夢は枯(か)れ野を かけめぐる

(季語 / 季節)枯れ野 / 冬


枯野とは、霜が降り草木もすっかり枯れ果てた、冬の野原を意味しています。

寒風にさらされ荒涼とした情景は、詠む人に郷愁を誘います。

この句は亡くなる4日前に詠んだもので、芭蕉が残した生前最期の句となりました。

死の直前にあっても旅や俳句を思う情念を素直に表現しており、辞世の句だとも言われています。

しかし、この句の前書きには「病中吟」と記されており、

「病中吟」と「旅に病んで」と「病」が重複している点に、芭蕉の心情が込められているのです。

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松尾芭蕉の生い立ち、経歴。


松尾芭蕉は1644~1694年、江戸時代の前期を生きた俳諧師です。伊賀国(現在の三重県)に生まれ、名を宗房と言いました。

松尾家は平家の末流を名乗る一族で、苗字・帯刀を許されてはいましたが、武士ではなく農民の身分でした。

13歳の時に父が死んでしまい、兄が家督を継ぎましたが、

生活は苦しく、芭蕉は伊賀国上野の侍大将の息子である、藤堂良忠に仕えることになります。

この藤堂良忠との出会いが、松尾芭蕉と俳諧とを結び付けることになりました。

しかし、1666年(22歳)に、主君である良忠がなくなったため、藤堂家から離れます。

江戸で生活を始めて数年、1675年(31歳)の時、芭蕉に大きな転機が訪れます。

当時、大坂で隆盛を極めていた談林俳諧の総帥、西山宗因が江戸にやってきました。

その際に行われた興行に、芭蕉も参加することになったのです。

芭蕉は34歳の時に力量を認められて、一人前の俳諧宗匠となり、経済的にも安定することが出来ました。

現在定着している「芭蕉」の号名を使い始めたのも、この頃からでした。

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「旅」の中に身を置く芭蕉の世界感


1684年(40歳)俳諧仲間との交流や評価人としての立場から脱却して、静寂で孤独な生活を始めました。

この頃から芭蕉は「旅」の中に身を置くことを考え始め、実際に多くの旅をしています。

きっかけは、深川の草庵が大火で焼失したことでした。

芭蕉庵は再建されましたが、自分をさらに深化させるため、

守られた庵に籠るのではなく、自然と触れ合う旅に出ることにしたのです。

1686年(42歳)春の発句会で「古池や蛙(かわず)飛びこむ水の音」を詠みます。

1689年(45歳)弟子の河合曾良(かわいそら)と「奥の細道」の旅に出ます。

この旅によって、芭蕉の代表作となる多くの句が詠まれました。

1694年(50歳)江戸から、伊賀、奈良、大阪へ向かい、大阪にて病死します。

葬儀には300人以上の弟子が参列したと言われています。

松尾芭蕉辞世の句は、「旅に病んで 夢は枯野を かけ廻る」でした。

死の床に伏している状態でも、旅から思いを切り離せなかったのでしょう。

19歳で初めて俳句を詠んでから、50歳で亡くなるまでに、芭蕉は1000句を超える俳句を詠んでいます。

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芭蕉は旅費の工面はどうしてた?


松尾芭蕉は、「旅」の中に身を置くことで、自身の俳句を高めていて、

実際多くの旅に出ていますが、その財源は何だったのでしょうか?

当時でも旅するなら、相当のお金は掛かると思います。

芭蕉がどのように旅費を工面したかについては、こんなことが考えられるそうです。

粗末であった自宅である深川の芭蕉庵を売却し、旅費の一部にしたと言われていますが、大したお金にはならなかったようです。

旅に出発するに際して、門弟や友人・知人からの選別があり、

旅先では俳諧指導や、句会の出座料、加点料、短冊や色紙に書いた際の謝礼金などがあったようです。

芭蕉と曽良は地元の俳諧関係者や庄屋、土地の名士・役人宅で、

無料で宿泊できることが多く、行く先々で歓待され食事も提供されたと言います。

それほど当時の芭蕉の句は、前衛的で認められていたようです。

しかし、これだけでは十分ではなかったのではないかと言うことから、

一説によると、水戸藩が資金援助をしたのではないかと言われています。

徳川光圀は「大日本史」編纂事業を進めていて、全国に調査員を派遣していたことから、

芭蕉の門弟である曽良に、調査の一部を依頼し、調査費の名目で旅費を援助したとい言うのです。

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