アガサ・クリスティー
私がアガサ・クリスティーの『ABC殺人事件』を読んだのは、確か、高校1年生の1学期でした。
駅前の本屋で、早川書房のハヤカワミステリー文庫を手に取った時、
その表紙の装丁がスタイリッシュに感じた事と、「ABC」と言う題名が何だろうと、惹かれたためでした。
エルキュール・ポワロ。
『ABC殺人事件』
『ABC殺人事件』(The ABC Murders)では、エルキュール・ポワロの元に届いた、1通の挑戦状から物語が始まります。
その挑戦状に、記されていた予告通りに、
Aで始まる地名の町で、Aの頭文字の老婆が殺され、その現場には不気味な『ABC鉄道案内』が、残されていたのです。
それに続き、第2、第3の挑戦状が届き、Bの地で、Bの頭文字の娘が、
Cの地で、Cの頭文字の紳士が、殺されて行き、連続殺人事件が起きるのでした。
こうした、謎めいたストーリーの展開で、私はアガサ・クリスティーの世界に、魅了されることになったのでした。
名探偵ポアロ ABC殺人事件 (ハヤカワ・ジュニア・ブックス エルキュール・ポアロ 0) [ アガサ・クリスティー ]
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推理小説の面白さに目覚めたコナンドイル
コナン・ドイルの『緋色の研究』。
アガサ・クリスティーの作品を読む前に、
アーサー・コナン・ドイルの、『緋色の研究』(A.Study in Scarlet)、『四つの署名』(The Sign of Four)、
『バスカヴィル家の犬』(The Hound of the Baskervilles)、
『恐怖の谷』(The Valley of Fear)を読んでいて、推理小説の面白さに、目覚めていました。
そんなことがあって、他には、どんな面白い推理小説の世界があるんだろうかと、探していた時に、
エルキュール・ポワロに出合ったのでした。
【関連】
シャーロックホームズの『緋色の研究』の探偵事務所はベーカー街221B。
ドラマ『相棒』とシャーロックホームズ、エルキュールポワロの関係性。
灰色の脳細胞の持ち主、ポワロ。
架空のベルギー人の名探偵。
エルキュール・ポワロは、アガサ・クリスティーが執筆した推理小説で、架空のベルギー人の名探偵として登場します。
そして、ポワロは19世紀中頃に、生まれた設定になっています。
ベルギー南部の、フランス語圏の出身で、ベルギーのブリュッセルで、警察官として活躍し、
署長まで出世した人物で、その後退官します。
エルキュール・ポワロは、第一次世界大戦中に、ドイツ軍の侵略により、イギリスに亡命し、
イギリスの富豪夫人の援助を受けて、エセックス州の小さな村にある、スタイルズ荘の傍の、コテージで生活を始めるのでした。
『スタイルズ荘の怪事件』
そこで以前ベルギーで知り合いだった友人の、アーサー・ヘイスティング大尉と再会し、『スタイルズ荘の怪事件』を解決するのです。
その後は、ヘイスティング大尉と同居し、探偵として活躍し、数多くの難事件を、解決するのでした。
だから、『スタイルズ荘の怪事件』は、ポワロとヘイスティングにとっては、出会いと共に、
最初の難事件解決の、スタートとなる事件だったのです。
エルキュール・ポワロの人物像。
エルキュール・ポワロの特徴。
エルキュール・ポワロの特徴と言えば、
身長5フィート4インチ(約163㎝)、緑の眼に卵型の頭、黒髪でピンと跳ね上がった、大きな口髭を携えています。
女性に優しく、物腰が柔らかなジェントルマンで、
整理整頓に厳しく、身なりに注意を払っていて、乱雑さには我慢が出来ない性格です。
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灰色の脳細胞は、世界最高の探偵の証し。
灰色の脳細胞が動き出す。
そして難事件が解決の兆しを見せると,
「私の灰色の脳細胞(little gray cells)が活動を始めた」と、告げるのでした。
この場面がやって来るとワクワクして、ページを綴った覚えがあります。
この「灰色の脳細胞」について、エルキュール・ポワロは、世界最高の探偵の証しであると、自認するのでした。
そして、ヘイスティングの何気ない一言がヒントとなり、事件が解決に至るのが、定番のストーリーになっています。
ヘイスティングは元英国軍人。
アーサー・ヘイスティング
アーサー・ヘイスティングは、ポワロの相棒で、イートン校出身です。
元英国陸軍に所属し、かって、第一次世界大戦の戦地に赴いたが、負傷により予備役に退いています。
軍務を勤める前は、ロイド保険協会に勤務していたようです。
彼は生真面目で、正義感が強く、女性に優しい英国紳士で、スタイルズ荘の事件当時は、30歳だったようです。
何だか、シャーロックホームズの相棒の、伝記作家ジョン・H・ワトソン医師も、
シャーロックホームズに出会う前は、アフガニスタン戦線で、負傷した軍医でしたが、
ヘースティングズも、ワトソンと、凄く境遇が似ています。
ワトソンとヘースティングズ。
ワトソンとヘイスティングは、どちらも元軍人で傷病兵
シャーロック・ホームズは、始めて出会ったワトソンに対して、アフガニスタンに従軍し、
戦場で左肩に重傷を負い、イギリスに送還された軍医でしょうと言い当てる、あのシーンを彷彿させます。
ヘイスティングの他に、ポワロの脇を固めるのが、
ベルギーのブリュッセルでの警察官時代に、ポワロと一緒に捜査にあたっていた、ジャップ主任警部。
秘書のミス・レモンは、神経質で機械的な女性ですが、有能な秘書で、良い脇役を演出しています。
アガサ・クリスティ短編集 (講談社英語文庫) [ アガサ・クリスティー ]
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1920~1930年代のアガサクリスティー。
アガサ・クリスティーの初期作品。
アガサ・クリスティーの、初期の代表作は、『スタイルズ荘の怪事件』1920年刊、『アクロイド殺し』1926年刊、
『オリエント急行の殺人』1934年刊、『ABC殺人事件』1935年刊など、興味深い作品が並びます。
ポワロの人気は、今も健在。
エルキュール・ポワロの人気の秘密は。
何故、これ程に、エルキュール・ポワロは、人気が高いのでしょう。
その秘密は、一目見れば忘れない風貌、そこに、欧米人が醸し出す気品があって、その振る舞いが正に、ジェントルマンなのです。
彼は、物的証拠と心理分析で、事件を解決に繋げてゆきます。
彼の脳細胞の中が整理されると、容疑者全員を集めて、推理の展開を披露します。
そして、犯人をその場で示すのでした。この展開に、推理小説の面白さがあると感じる方も、多いのではないでしょうか。
ポワロの推理の山が最後に来る。
現在の推理ドラマで使われる手法。
この手法は、今では多くのドラマや映画で使われていて、推理ドラマの中では、最後のシーンで、
海岸の高台に事件関係者が集めれれ、刑事や探偵が、ポワロと同じように物的証拠や、心理分析を駆使して、容疑者を突き詰め、
逮捕に至る筋書きでドラマが終わります。
現在のテレビドラマの構成にも、エルキュール・ポワロは、絶大な影響を与えているのです。
ヨーロッパ大陸を駆け巡るポワロ。
行動範囲の広いポワロ。
それと、もう一つの面白さは、『オリエント急行の殺人』や、『ナイルに死す』など、
エルキュール・ポワロの、行動範囲がヨーロッパ全土から、アフリカまで、及んでいることでしょう。
豪華寝台特急「オリエントエクスプレス」では、通過する各国を舞台に、豪華列車での旅を、読者に届けていますし、
『ナイルに死す』では、アフリカの大自然の素晴らしさを、伝えています。
そして、この設定は、これらの小説を、映画化やドラマ化した場合には、視覚の上でも、素晴らしい映像となり、
大きなインパクトを観客や、茶の間に届けるようになっているのです。
でも、当のエルキュール・ポワロは、船や飛行機が苦手だったようなのは、皮肉なことですね。
アガサ・クリスティーの生い立ち
アガサ・クリスティーは、1890年のヴィクトリア朝のイギリスで生まれました。
良家の子女として、立派な邸宅で使用人に囲まれ育ち、将来は条件の良い結婚だけを望まれていました。
彼女が成人する頃に大英帝国は絶頂期を迎え、終焉の道を歩き出します。
第一次世界大戦が勃発すると男たちは戦場へ向かい、ポストが空いた事で女たち外で働き始めます。
アガサ・クリスティーもまた病院で看護奉仕に励みました。
床掃除をし、医者から無礼な扱いを受け、薬剤師の助手となる試験勉強もしました。
今も残るノートには、毒薬の一覧表が…
この専門知識はデビュー作『スタイルズ荘の怪事件』でも、遺憾なく発揮され有名作家となったのです。
「アガサクリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』でポワロ登場」への5件のフィードバック
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