渋沢栄一の『論語と算盤』と、孔子の教えの関係性。




渋沢栄一の『論語と算盤』と孔子の関係性。

2021年のNHK大河ドラマは『青天を衝け』で、これは、明治時代の実業家、渋沢栄一が主人公です。

彼の著書『論語と算盤』の題名にあるように、論語を愛読し、論語の教えと、経済を結び付ける事が、肝要と説いています。



日本資本主義の父。


企業設立480社。慈善事業500超。

渋沢栄一は、日本最初の銀行、第一国立銀行を設立させ、現在のJR、東京電力、帝国ホテルなど、約480社の設立に関わりました。

その一方で、500を超える慈善事業にも関わったとされ、「日本の資本主義の父」と呼ばれています。

彼の著書『論語と算盤』では、道徳と経済活動における、双方の必要性が大事だと説かれています。

例えば、論語では、

子曰、「富与貴、是人之所欲也。 不以其道得之、不処也。…」

「富と貴とはこれ人の欲する所なり、其の道を以てせずして之(これ)を得れば処(お)らざるなり」の一説があります。

現代語訳にすると、このようになります。

先生が言いました。

「富と貴いものは、誰でも欲しいものである。(しかし)それにふさわしいやり方で手に入れるのでなければ、(その地位に)安住しないことだ。」(現代語訳)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書 827) [ 渋沢 栄一 ]



『論語と算盤』相反するものの原点。




多様性の価値観を尊重。

人の倫理を説く論語の趣旨からすると、富や地位を軽視されがちですが、

渋沢栄一は、「正しい道理を踏んで得た富ならば、敢えて差し支えないとの意である」として、

利益追求自体は否定せず、その手段の正しさを、問題にしていたのです。

秩序を重んじる論語と、競争が原動力となる経済活動は、一見相反するように見えますが、

渋沢栄一は、一つの原理に頼るのではなく、社会の様々なものを包摂しながら、良くして行くと言う考え方を持っていて、

現在の、多様性ある価値観を、尊重する精神を持っていたのです。

図解 渋沢栄一と「論語と算盤」 [ 齋藤孝 ]



『論語』子曰く…。




孔子と彼の高弟の言行。

『論語』とは、孔子と彼の高弟の言行を、孔子の死後に弟子達が記録した書物です。

『孟子』『大学』『中庸』と併せて、朱子学における「四書」の1つに数えられています。

紀元前5世紀頃、中国の思想家であり、儒教の祖である孔子の言行を、

孔子の死後に弟子たちが編纂した『論語』は、孔子自身が執筆したものではありません。

今に伝わる論語が編纂されたのは、孔子の死後、かなり時間が経ってのことでした。

そして、『論語』は、『孟子』『大学』『中庸』とともに儒教における「四書」の一つに数えられていて、

官僚の登用試験である、科挙の出題科目になるなど、中国思想の根幹をなしていたのです。

小説渋沢栄一(上) (幻冬舎文庫) [ 津本陽 ]



孔子の生い立ち。




紀元前552年。裕福でない家に生まれる。

孔子の誕生は、紀元前552年のことで、春秋時代の魯(ろ)の国に生まれました。

孔子の家は、けっして裕福ではなく、身分も高いわけではなかったのです。

そんな環境で育った孔子は、特別な教育を、受けたわけではないようです。

当時の中国は春秋時代で、周王朝がしだいに衰退していくなかで、250以上の諸侯が乱立し、争いが絶えませんでした。

秩序が乱れたことで、血縁による封建体制が崩壊し、富国強兵の実現をはかる諸侯は、

より有能な人材を求め、実力主義による人材登用が盛んになってゆきます。

このような時代背景のもと、「諸子百家」と呼ばれる、さまざまな思想家や学派が誕生していったのです。

孔子も、そのうちのひとりで、「仁(人間愛)」と「礼(規範)」にもとづく、理想社会の実現を提唱していたのです。

孔子は短気でしたが、学ぶこと、弟子たちに教えることは、愛してやまなかったそうです。

全文完全対照版 論語コンプリート 本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文 [ 野中 根太郎 ]


『論語』の渡来は?




『論語』は、紀元390年に日本へ渡来。

『論語』が日本に伝えられたのは、紀元390年の応神天皇の頃で、

後に、聖徳太子や空海が学び、現代に至るまで、大きな影響を与えています。

日本に『論語』をもたらしたのは、5世紀頃に百済(クダラ)から渡来した、王仁(ワニ)という人物であったと言われています。

彼については『日本書紀』や『古事記』などにも、記されているそうです。

『論語』に記されている内容は、人として、生きてゆく中で、大切にするべき当たり前の事が殆どです。

その当たり前を、分かりやすい言葉で、短く表現しているということで、学識のある人々に、広く読まれるようになったのです。

小学生のための論語 声に出して、わかって、おぼえる! [ 齋藤孝(教育学) ]



新一万円札のお札の顔になる渋沢栄一。


経済効果は1兆6千億円。

渋沢栄一が脚光を浴びるニュースが、2019年に流れました。

それは、2024年上期に紙幣が刷新され、渋沢栄一が、一万円札の顔になる、ニュースでした。

その日、東京証券取引所では、紙幣関連銘柄に買い注文が殺到し、一部の銘柄で一時、値幅制限のストップ高になりました。

株式相場は、このニュースに敏感に反応しました。さすがに、渋沢栄一は、日本資本主義の父の証しです。

そして、紙幣刷新による経済効果は、1兆6千億円になると言う、試算も出ています。

彼は公益のために仕事をしなければならないとして、

自分と他者の利益を調和させる考え方として「道徳経済合一致」と言う考えを掲げていました。

その考えを集約したものが、1916年に出版した『論語と算盤』で、道徳と経済を調和を説いています。

渋沢栄一100の訓言 「日本資本主義の父」が教える黄金の知恵 (日経ビジネス人文庫) [ 渋澤健 ]



大谷翔平選手が読んだ『論語と算盤』




目標シートの参考文献にした。

これは、孔子の言行、「人は如何に生きるか」を基に、道徳と経済を如何に、調和する事が重要だと説いていて、

企業経営者のバイブルにもなっているのです。

この本を、日本ハムファイターズ時代の、大谷翔平選手が、読んでいて、

これを参考に目標設定シートを書いた事で、脚光を浴びたのでした。

渋沢栄一 人間の礎 (集英社文庫(日本)) [ 童門 冬二 ]

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