シューイチカズレーザー『赤ずきん旅の途中で死体と出会う』




【シューイチ】カズレーザーの推薦図書。

2021年2月28日放送の『シューイチ』は、好評企画「食べヨムツアー」第6弾!が放映されました。

今回は、3人の読書好き芸人が登場。

カズレーザーさん、麒麟の川島さん、アルピーの平子さんが、オススメする本を紹介されていました。



【シューイチ】食べヨム第6弾読書好き芸人



童話とミステリーが合体。

今回、カズレーザーさんが紹介したのが、童話×パロディーの、本格ミステリー『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う』でした。

著者は青柳碧人さんで、童話とミステリーが合体した、異色の連作短編集です。

この本は「読書メーター 読みたい本ランキング月間1位」(単行本部門 2020/6/9~2020/7/8)になった本で、

童話の世界で起こった事件に、赤ずきんが挑む、ミステリー短編集です。

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。 [ 青柳碧人 ]



『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う』




童話の世界がざわつく。

「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠れる森の美女」「マッチ売りの少女」を下敷きに、小道具を使ったトリックを満載して、

童話の世界で起こった事件の謎に、赤ずきんが挑む、作者、渾身の昔話シリーズの第2弾で、

こんなミステリーがあったのかと、興奮することに、間違いありません。

全編を通して『大きな謎』が隠されていて、最後まで読み進める楽しさが、隠されています。

前作の、日本の昔話をミステリで読み解き、好評を博した『むかしむかしあるところに、死体がありました。』に続き、

今回は、西洋童話をベースにした、連作短編ミステリーなのです。

今作の主人公は赤ずきん! ――クッキーとワインを持って、旅に出た赤ずきんが、

その途中で事件に遭遇し、赤ずきんが各話に登場して、探偵役を引き受けるのです。

むかしむかしあるところに、死体がありました。 [ 青柳碧人 ]



第1話。「ガラスの靴の共犯者」




シンデレラ。

第1話は、継母と姉たちの陰湿なイジめに合い、お城の舞踏会へ行くための、ドレスを持たないシンデレラが、

魔女の魔法で、きらびやかなドレス姿に変身すると言う、誰もが知っている顛末の中に、赤ずきんも、たまたま居合わせます。

魔女にシンデレラと一緒に、魔法をかけて貰い、舞踏会へ行くことになった赤ずきんは、

二人で仲良くカボチャの馬車に乗り、お城へ向かっていたところ、

道から男が突然飛び出して来て、馬車に引かれて、死亡してしまいます。

頭を抱える赤ずきんに対し、シンデレラは冷静な口調で〝引き逃げ〟を提言すると言う、

あまりにもショッキングなストーリー仕立てです。

シンデレラは、男の死体を埋めて隠すのです… …

カボチャの馬車は、深夜12時を過ぎたら、カボチャとネズミに戻ってしまいます。

そして、魔法が解けると殺人の証拠の、カボチャの馬車が消えてしまうのです。

悪魔のトリック (祥伝社文庫) [ 青柳碧人 ]



第2話。「甘い密室の崩壊」



ヘンゼルとグレーテル。

第2話は、密室状態だったお菓子の家の中で、魔女の死体が発見されます。

その犯人は、ヘンゼルとグレーテルの兄妹であることが冒頭で明かされ、赤ずきんの推理によって追い詰められていく心理を綴る、

いわゆる倒叙形式のミステリー仕立てになっているのです。

玩具都市弁護士 (講談社タイガ) [ 青柳 碧人 ]



第3話。「眠れる森の美女たち」




眠れる森の美女。

第3話は、「眠れる森の美女」を題材に選んでいます。ドイツの深い森の中に眠っていた「眠れる森の美女」の秘密が、

外部からの闖入者によって暴かれると言う、どんでん返しの連続の展開になるのです。

朧月市役所妖怪課 号泣箱女 (角川文庫) [ 青柳 碧人 ]



第4話。「少女よ、野望のマッチを消せ」




マッチ売りの少女。

第4話は、「マッチ売りの少女」を題材にしていて、赤ずきんの旅の目的が判明する「少女よ、野望のマッチを消せ」で、

これらを合わせて、全4話が収録されています。

アンデルセンの「マッチ売りの少女」のストーリーは、

年の瀬も押し迫った大晦日の夜、小さな少女が一人、寒空の下でマッチを売っていました。

マッチが売れなければ父親に叱られるので、すべてを売り切るまでは家には帰れません。

しかし、街ゆく人々は、年の瀬の慌ただしさから少女には目もくれず、目の前を通り過ぎていくばかりです。

夜も更け、少女は少しでも暖まろうとマッチに火を付けます。

マッチの炎と共に、暖かいストーブや七面鳥などのごちそう、飾られた、クリスマスツリーなどの幻影が、一つ一つと現れ、

炎が消えると同時に、幻影も消えるという不思議な体験をする物語のです。

朧月市役所妖怪課(妖怪どもが夢のあと) (角川文庫) [ 青柳碧人 ]



第1話から結末の伏線が隠されていた。




何故、シュペンハーゲンなのか?

実は、第1話の段階から、赤ずきんの旅の目的地は、シュペンハーゲンであることが、明かされています。

それは、何故なのか? 理由が判明するのは、第3話の結末部です。そして、最終第4話に至り、ついに、赤ずきん自身の物語が、語られ始めるのです。

朧月市役所妖怪課 河童コロッケ (角川文庫) [ 青柳碧人 ]



旅の目的地は、シュペンハーゲン。



作者の青柳碧人さんが語る構成。

この筋書の展開を、作者の青柳碧人さんは、こんな風に話しています。

「第1話を書いた段階で、最後の敵は、マッチ売りの少女にしようと決めていました。

マッチ売りの少女を悪い奴にして、赤ずきんに、成敗させようと思ったんです」

西洋童話にはさまざまな登場人物が存在しますが……マッチ売りの少女は一番「悪い奴」にしてはいけない存在ではないのか!?

「だから面白いかな、と思っちゃいましたね。それに、昔からこのタイトルがずっと気になっていたんですよ。

アンデルセンの童話では、ヒロインが手売りするマッチは実際のところ、街でぜんぜん売れてないじゃないですか。

自分としてはタイトルの字面を愚直に受け取って、マッチをバリバリ売りまくる、少女の話が書いてみたかった(笑)。

〈エレンはわずか13歳にして、正真正銘、シュペンハーゲンでいちばんの「マッチ売りの少女」になったのでした〉という一文が、この本の中で一番好きな文章ですね」

そして、序盤に現れるその一文を契機に、マッチ売りの少女エレンは、ダークサイドへと堕ちていく。赤ずきんは、彼女の策謀にハマってしまうのか?……。

意外な展開が、最後に待っているのです。

誰もが知っている童話を、ミステリー仕立てにさせ、トリックを駆使したオリジナリティーの凄さが、目から鱗の物語になっているのでした。

カズレーザーさんの、本の目利きにも脱帽の一冊でした。

綾志別町役場妖怪課 すべては雪の夜のこと (角川文庫) [ 青柳 碧人 ]


青柳碧人(あおやぎ・あいと)

1980年、千葉県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。早稲田大学クイズ研究会OB。2009年、「浜村渚の計算ノート」で「講談社 Birth」小説部門を受賞し、デビュー。主な著書に「朧目市役所妖怪課」「西川麻子は地理が好き。」「猫河原家の人びと」シリーズなど。『むかしむかしあるところに、死体がありました。』で2020年の本屋大賞にノミネート。

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